アラブ 2014年5月19日

教えて! 尚子先生
「アラブの春」とはなんですか?【中東・イスラム初級講座・第5回】

チュニジア、エジプト、リビアと革命が続く中東。今でも毎日のように、テロや紛争のニュース が絶えません。なぜ中東では革命や政変がこんなに起こるのでしょうか。今回は「アラブの春」について。人々は何を考え、何を求めていたのでしょう。中東研究家の尚子先生がわかりやすく説明します。

 「アラブの春」とは、2010年末から2012年にかけて、北アフリカおよび中東で起きた一連の体制に対する抗議運動を意味します。

 なぜ、「春」なのかというと、1968年に自由を求めたチェコスロバキア(現在のチェコ)の人々の政治改革運動である「プラハの春」になぞらえているためです。チェコスロバキアの自由化運動は、最終的にはソ連率いるワルシャワ機構軍による軍事介入で、大量の犠牲者を出し、運動は抑えこまれてしまいました。

 一方、「アラブの春」はチュニジアから始まり、エジプト、シリア、リビア、イエメン、ヨルダンなどに波及し、政権が倒された国もあれば、いまだ内戦状態に陥っている国や運動が抑えこまれた国もあります。

春を楽しむ少女たち=ジェラシュ遺跡:ヨルダン【撮影/安田匡範】

 

「民衆による抗議運動」=「春」

 チェコスロバキアでの「プラハの春」と「アラブの春」の関連性は?というと、人々による現体制や抑圧に対する「抗議運動」であるという以外、関連性はないといってよいでしょう。では、なぜこのように同じような呼び方をするのでしょうか?

 西洋では伝統的に、体制や抑圧に対する民衆の「抗議運動」を「春」と呼びならわす習慣があるようです。「プラハの春」もそうですが、古くは1848年の「諸国民の春」もその例です。ですから、アラブとプラハが関連しなくても、民衆による抗議運動ということで「春」と呼ばれているのです。

 「アラブの春」は、まだ記憶に新しいので覚えていらっしゃる方も多いでしょうが、2010年12月にチュニジアで始まります。抗議運動の発端は、失業中のムハンマド・ブーアズィーズィー(26歳・当時)が路上で青果を売っていたところ、政府による取り締まりを受け、商品を没収されたことに抗議して、焼身自殺したことにありました。

 この事件がなぜその後、国全体に広がる抗議運動につながったのでしょうか? その原因は、1)ベン・アリー政権への不満の高まり、2)若者の失業率の高さ、3)焼身自殺という抗議の方法とその伝達方法、にあったといわれています。


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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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