数値目標はない。
やることそのものが面白かった

長谷川 勝ち負けに一喜一憂するというよりも、わかりたいからもう一局という感じだったんですか。

羽生 もちろん勝てば嬉しいという気持ちもありましたが、それ以上に「駒を動かしてるのが楽しかった」というのが一番近い感覚だと思います。

長谷川 考えるというより、動かすのが楽しい。

羽生 子どもなんで、考えていませんでした。ただただ、駒を動かすのが楽しいという感じです。

長谷川 何段を目指してやるとか、そういうのはあったんですか。

羽生 それはなかったです。何か、もちろん強い人と対局したいというのはありましたけれど。何段になるとか、何級になるとかという気持ちはまったくと言っていいぐらいなかったです。

駒を動かす中で、新しい発見があり、今までと同じはずの盤上がまったく違って見える。そんな経験は新鮮で面白いと感じました。

長谷川 純粋な内的喜びが大きかったんですね。

羽生 そうですね。次に進んでいくという時にわかったという「手応え」みたいなものを得ることが、すごく楽しかったんです。

長谷川 そもそも、将棋にここまで熱中できた理由、その環境的要因として、どのようなことが挙げられますか。

羽生 2つ理由が挙げられると思います。