生産効率の阻害要因を
3つの観点から考える

 ミャンマーにおいて、ティラワ工業団地の具体化が進み、製造業の進出がこれから本格化してくる。現在は、電力不足や裾野産業がないことなどから、主に縫製業のみの進出にとどまっているが、今後はより多様な業種での進出が進んでいくことだろう。

 特に、中国や東南アジア各国における近年の賃金上昇に苛まれている日系の製造業は、域内で最低レベルのミャンマーの賃金水準に対して高い期待感を持っている。

 その一方で、現地では日本にいると見えてこない各種のリスクが存在している。本連載第16回、17回で、インフラや法制度の未整備や人材確保の困難さといったミャンマーならではのリスクがあり、期待している人件費の削減効果などは当初思ったほど削減できないことを述べてきた。

 今回は第17回に引き続き、ミャンマーで縫製業及びプラスチックの成型を中心とした、軽工業品の製造を行っているゴールデンバーグ社の金沢社長に、さらに詳しく現地ならではの問題や効率性低下の原因と対応策について聞いた。

 前回、ゴールデンバーグ社の場合、彼らが中国で製造していたものをミャンマーに移管した結果実現したコスト削減効果は、おおよそ10%だったと説明した。彼らがミャンマーに進出した2012年当時、工員の人件費が、ミャンマーでは中国と比べて4分の1から5分の1程度で確保できた。それにもかかわらず、結果的にコスト削減効果が10%程度にとどまった最大の理由は、現地ならではの効率性の悪さからだ。

 この生産効率の悪化については、複数の要因で発生する。ここでは、大きく3つの観点からそれぞれの効率性悪化の要因と、その対応策について考えてみたい。

1) 工場管理
2) 労務管理
3) 納期・物流管理