今でこそ、季節を問わず1年中売られ、日本を代表する香味野菜である「三つ葉」ですが、食用されていたことが確認されたのはずいぶん遅く、室町時代のことです。

 北海道から沖縄まで、山間の湿地帯に自生する三つ葉は、数少ない日本原産種の野菜でありながら、不思議にそれまでの書物や記録に名前が挙がってはいません。

芹の陰で長く日の目を見なかった「三つ葉」 <br />栽培が始まったのは江戸時代三つ葉の浸し物
【材料】三つ葉…1束/煎酒(またはだし醤油)…適量/胡麻…適量
【作り方】 ①鍋にたっぷりのお湯を沸騰させて塩(分量外)を入れ、根を切ってヒモで結んだ三つ葉をサッと茹でる。②1を冷水に取って3cm幅に切り、水気を絞る。③器に盛って胡麻を振り、煎酒(またはだし醤油)をかけていただく。
※煎酒の作り方…鍋に酒1カップ(200ml)、梅干し1個、塩少々を入れて弱火にかけ、煮立ってきたら削りがつおを入れ、5~6分煮詰めて漉す。

 当初三つ葉は「三葉芹(みつばぜり)」と呼ばれており(書物によって「英蓉葉」「野蜀葵」という漢字も使われました)、芹の亜種のような扱いをされていたようです。

 1643年刊行の『料理物語』にも、芹の食べ方として「汁、あへもの、せりやき、なます、いり鳥に入。」とあり、最後に「みつばせりも同じ」と、ついでのように書かれています。

 その後、『百姓伝記』という1682年に刊行された農書により、山で自生していた三つ葉が、栽培されるようになっていたことが分かります。