消費者物価は、2008年には上昇したが、09年になって下落した。9月の全国指数は、対前年同月比2.2%の下落となっている。

 この状況は、一般にデフレと言われる。そして、「デフレが続く限り経済活動は活発化しないので、ここから脱却する必要がある」と主張されることが多い。

 以下では、こうした見解が誤りであることを指摘したい。

 まず注目すべきは、以下で見るように、構成項目によって価格動向には大きな差があることだ。教科書的な意味の「デフレ」とは、すべての財・サービスが一様に低下することである。つまり、相対価格は不変で絶対価格が下落する状況が、「デフレ」である。しかし、現在生じている物価下落は、これとは異なるものだ。

 こうした区別がなぜ必要かと言えば、必要な対応が異なるからである。デフレは、貨幣供給量が過小であるなどのマクロ経済的要因によって引き起こされる。したがって、それに対処するには、貨幣供給量の増大などのマクロ政策が必要だ。それに対して、相対価格が変化する場合に必要なのは、経済行動を変えることである。相対価格の変化を伴う物価動向の変化は、食い止めるべきものではなく、利用すべきものなのである。

最近の物価下落は、
耐久消費財とエネルギー価格の下落による

 最近の消費者物価の動向は、【図表1】に示すとおりである。