ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
岸博幸のクリエイティブ国富論

誇り高き財務省にも“不本意”であろう15兆円補正予算の悲劇

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第39回】 2009年5月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 15兆円規模の補正予算が衆議院で採決されました。これで、野党が参議院でどう抵抗しようとも、麻生政権が策定した経済危機対策が実行に移されることになったのです。私は、テレビで補正予算についてコメントする機会が何度かありましたが、部分的にしか使われませんでしたので、ここで私の評価を正確に記しておきたいと思います。

需要創出効果は大きくない

 結論から言えば、今回の補正予算はまったく評価できません。

 成長率(昨年10~12月期で-12.1%)や失業率(3月で4.8%)などの指標から明らかなように、経済がかなり悪くなっていることを考えると、大規模な需要追加は不可避であり、その意味で15兆円という過去最大規模の財政出動に踏み切った政治決断は高く評価すべきだと思います。

 しかし、残念ながら15兆円の予算の中身は、霞ヶ関の官僚主導となってしまっているのです。加えて、おそらく最終段階での政治決断で補正予算の総額が大きく膨らんだことにより、知恵のない官僚が考えた陳腐なアイディアに膨大な予算がついてしまいました。実際に、知り合いの官僚からは「説明がつく予算なら何でもOK、桁が一つ増える位の勢いの増額査定だった」といった類いの話が幾つも入って来ています。

 そうした内情の結果、残念ながら、補正予算の中身については評価できない点が多過ぎます。第一に、需要追加という短期的な視点を考えた場合、経済効果がそれ程大きいとは思えません。

 例えば、民主党議員の質問趣意書への政府の回答から明らかになったように、“基金”の造成に多額の予算が使われています。政府全体で合計58の基金に4兆6千億円も投入されるようです。通常の予算ならば年度内執行が原則なので、来年3月までに予算支出されることになりますが、基金は数年間に渡って使えるので、そもそも短期的な経済効果は大きくありません。それなのに、何故15兆円の1/3も基金に使うのでしょうか。

 もちろん、基金の中には、地域医療や介護労働者の給料引き上げなど重要性の高いものも含まれており、全否定する気はありません。しかし、例えば今回の補正予算で農水省には1兆円の予算が計上されていますが、そのうち7千億円が基金への計上となっており、しかも項目自体あまり景気刺激効果が高くないものばかりです。霞ヶ関の官僚自ら、政策の知恵もないし、短期間で大規模な予算を消化する自信もないと言っているようなもんではないでしょうか。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


岸博幸のクリエイティブ国富論

メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」

⇒バックナンバー一覧