15兆円規模の補正予算が衆議院で採決されました。これで、野党が参議院でどう抵抗しようとも、麻生政権が策定した経済危機対策が実行に移されることになったのです。私は、テレビで補正予算についてコメントする機会が何度かありましたが、部分的にしか使われませんでしたので、ここで私の評価を正確に記しておきたいと思います。

需要創出効果は大きくない

 結論から言えば、今回の補正予算はまったく評価できません。

 成長率(昨年10~12月期で-12.1%)や失業率(3月で4.8%)などの指標から明らかなように、経済がかなり悪くなっていることを考えると、大規模な需要追加は不可避であり、その意味で15兆円という過去最大規模の財政出動に踏み切った政治決断は高く評価すべきだと思います。

 しかし、残念ながら15兆円の予算の中身は、霞ヶ関の官僚主導となってしまっているのです。加えて、おそらく最終段階での政治決断で補正予算の総額が大きく膨らんだことにより、知恵のない官僚が考えた陳腐なアイディアに膨大な予算がついてしまいました。実際に、知り合いの官僚からは「説明がつく予算なら何でもOK、桁が一つ増える位の勢いの増額査定だった」といった類いの話が幾つも入って来ています。

 そうした内情の結果、残念ながら、補正予算の中身については評価できない点が多過ぎます。第一に、需要追加という短期的な視点を考えた場合、経済効果がそれ程大きいとは思えません。

 例えば、民主党議員の質問趣意書への政府の回答から明らかになったように、“基金”の造成に多額の予算が使われています。政府全体で合計58の基金に4兆6千億円も投入されるようです。通常の予算ならば年度内執行が原則なので、来年3月までに予算支出されることになりますが、基金は数年間に渡って使えるので、そもそも短期的な経済効果は大きくありません。それなのに、何故15兆円の1/3も基金に使うのでしょうか。

 もちろん、基金の中には、地域医療や介護労働者の給料引き上げなど重要性の高いものも含まれており、全否定する気はありません。しかし、例えば今回の補正予算で農水省には1兆円の予算が計上されていますが、そのうち7千億円が基金への計上となっており、しかも項目自体あまり景気刺激効果が高くないものばかりです。霞ヶ関の官僚自ら、政策の知恵もないし、短期間で大規模な予算を消化する自信もないと言っているようなもんではないでしょうか。