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ビジネス継続のため経営の自立を目指せ
成長か継続か―中堅企業のIT経営学(1)

上村孝樹 [ジャーナリスト/コンサルタント]
2009年11月9日
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 「不況のせいで経営が苦しい」と悩む経営者は多いが、本当に不況のせいだろうか。じつは現在の苦境は一過性のものではなく、すでに十数年前から始まっている構造的な変化によるものではないだろうか。

 地球という限られた空間でビジネスを展開していることを考えれば、企業が果てしなく成長を続けることは不可能だ。現代日本は、ビジネスの拡大ではなく、継続性を目指す“非成長経済”の時代に入っていると私は考える。

 もはや、ひたすら規模を追求することは、収益を圧迫するだけでなく、大きなリスクをもたらすものだということを、肝に銘じておくべきだろう。価格決定権はすでに企業の側にはない。大量生産・大量消費を求めれば、適正な利益が確保できず、平均化した商品は顧客のロイヤルティの低下を招く。薄利多売のビジネスモデルでは、市場で1社か2社しか生き残ることはできない。

 非成長経済時代で中堅企業に求められるのは「経営の自立」である。全体のパイが広がらないなかで中堅企業が勝ち残るには、特定の取引先に依存することなく自らのポジションを築き、自社の価値を認める顧客から適正な利益を得ていくしかない。そのために「経営の自立」は必須になる。しかし、残念ながら日本の中堅企業の多くは自立できていないのが現状だ。

経営の自立を計る5つの基準

 経営が自立しているかどうかを測る評価基準は5つある。

1)顧客は分散しているか
2)提案型の仕事をしているか
3)顧客を自力で獲得できるか
4)オリジナルのサービスや技術を持っているか
5)資本面で無理な借り入れや縛りはないか

である。これらの五つの基準を強化することが、経営の自立を実現し、非成長経済時代での勝ち残りにつながる。

 資本力や規模で大企業に劣る中堅企業だが、今の時代はチャンスでもある。自社の付加価値を認め、適正な価格で取引をしてくれる顧客は、全国的に見れば確実に存在する。従来商圏を拡大するには、営業所を各地に開設し、大規模な広告宣伝を打つなど、膨大な費用がかかっていたが、インターネットの普及で小口の契約を集めやすくなっている。中堅企業が自立化を実現するには適した時代なのだ。

 そこでカギになるのが、ITの活用である。顧客を見つけ出すために、ホームページやメールなどで情報を発信し、ヘルプデスクやコールセンターを通して、顧客との良好な関係を築くことができる。特に中堅企業では、マーケティングや顧客とのリレーションシップのためのIT投資が、今後ますます重要になってくるだろう。長期的な視点に立った顧客とのきめ細かな関係づくりは大企業にはできないところであり、そこに中堅企業の勝機がある。

 非成長経済の時代は、企業が取引先を選ぶ時代でもある。自らの価値を認めてくれる顧客をITによって獲得し、ITを活用してより緊密な関係をつくっていくことで、経営の自立化を実現し、ビジネスの継続性を高めることができるのである。

(第2回に続く)

 

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上村孝樹 [ジャーナリスト/コンサルタント]

「日経情報ストラテジー」「日経アドバンテージ」(ともに日経BP社)などの編集長を経て2005年に独立してフリーに。経済産業省IT経営応援隊「IT経営百選」選考委員会委員長などを歴任。事業創造大学院大学の客員教授も務める。


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