危機意識を持つ日本の中堅造船会社を中心に、2013年4月にスタートした技術開発会社のマリタイムイノベーションジャパン(MIJAC)。日本の造船会社は、2000年以降に建造量で韓国と中国の造船会社に追い抜かれ、相対的なプレゼンスが年々下がり続けている。一方で、日本の貿易量の99.7%は、今も船舶による国際海運が担う。MIJAC創設者の信原眞人社長に背景事情を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 池冨 仁)

中堅造船会社は“崖っぷち”にある <br />――信原眞人・マリタイムイノベーションジャパン社長 <br />ロングインタビュー のぶはら・まさと/1951年、東京都生まれ。東京大学工学部を卒業後、三菱重工業に入社。33年間、三菱重工の長崎造船所などで船舶の設 計・開発・研究に従事する。2008年、キャリアを買われて日本郵船グループの研究・開発子会社MTIに入社。13年、マリタイムイノベーションジャパン の代表取締役社長に就任。幼少の頃より“大の船好き”であり、小学校高学年で「三菱重工技報」を取り寄せていた。大学時代はワンダーフォーゲル部に所属。 趣味は本格登山。
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――4月10日、三菱重工業の100%子会社である三菱重工舶用機械エンジンが、マリタイムイノベーションジャパン(MIJAC)へ出資を伴う事業への参加を決めました。もともと三菱重工の船舶用エンジン部門であり、MIJACの研究テーマの1つ「国産クリーンエンジンの開発」には共同研究者として参加していましたが、出資することで今回さらに一歩踏み込んだことになります。

 はい。彼らは、自社開発した「三菱UEディーゼルエンジン」を持っており、国内外で各種の船舶に搭載されている実績があります。今後は、これまで以上に緊密な研究開発を行うことができるようになります。

 MIJACは、2013年4月にスタートしたばかりの“技術開発会社”です。設立に当たっては、中堅造船会社の大島造船所(長崎県)、新来島どっく(東京都)、常石造船(広島県)、サノヤス造船(大阪府)が出資し、さらに大手海運会社の日本郵船と日本海事協会に加わってもらいました。

 主に、船舶の設計および建造技術、船舶の運航技術、船舶から出る二酸化炭素や有害物質を削減する技術、そして海洋エネルギーを利用する技術などに関する研究開発をすることを目的にしています。成果は、共有していきます。

 背景にあった問題意識は、3つあります。