「できる理由」から始める

成功に不可欠なのは<br />「人材の借り物競争」!?<br />―――白木夏子×南壮一郎対談後編南壮一郎 (みなみ・そういちろう) 1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。その後、株式会社ビズリーチを創業し、2009年4月、管理職・グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」を開設。2010年、「お得に贅沢体験」ができるセレクトアウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を開始。

南 ビズリーチをアジアに展開させようと決めたとき、僕、日本のオフィスにある自分の席もなくして飛び込んでいったんです(笑)。

白木 ええっ。周りの方、困られなかったですか?

 僕がいないなら、他の人がやるしかありません。僕、もともと父親の影響で駐在員になる夢も持っていたのですが、起業したときにこの夢はあきらめていて。でも、途中で気づいたんです。「自分で辞令出せばいいじゃないか!」って。

白木 あはは、社長ですものね。

南 「社長がいないと会社が回りません」とさんざん言われましたが、そんなはずはない。僕ができないなら、誰かがやればいいだけの話ですから。

白木 自分じゃなくてもいい、できる人がやればいい、と。

 僕は「できる理由から始めよう」を大切にしています。みんな、できない理由ばっかり並べるんですよ。できる理由から始めて、課題を解決していけばいいはずなのに。

白木 その方が面白いことが起こりそうですね。

南 そうです。人生も仕事も、課題が多い方が頑張れるじゃないですか。人間なんてだいたいフェアにできているので、環境や課題を与えられれば、みんなわくわくして頑張ると思います。でも、そういう環境に飛び込まないと課題にはぶつかれない。「課題解決を楽しんでやる!」と思ってあえて壁にぶつかりに行けばいいのではないでしょうか。

白木 そうですね。実は、私も将来、東京のほかにどこか2ヵ国を拠点にして、一年の3分の1ずつをそれぞれの国で過ごしたいな、と考えていて。それが直近の目標です。

南 おお、いいですね。

白木 将来的にHASUNAの海外展開も視野に入れていて、それなら、その場所に住めばいい、自分の手で展開していけばHASUNAのビジネスも個人の夢も両立するじゃないか、と気づいたのです。

 なるほど。

白木 新しい土地に住んだり挑戦したりすると、新しい自分やぜんぜん知らなかった才能に気づいたりしますよね。きっと南さんもそうじゃないかと思うのですが。そういう、常に刺激がある人生を送っていきたいと思っています。

 白木さんは本当に人生に前向きですよね。今まで、後悔するようなことはなかったのではないですか?

白木 いえ、とんでもないです! 後悔なんて数え切れないくらい、いっぱいありますよ(笑)。

 へえ、それは意外です。たとえばどのような後悔ですか?

白木 そうですね。いちばん大きいのは、バックパッカーで旅していたとはいえ、もっと世界中を自分の目で見ておけばよかったということでしょうか。これは心から後悔しています。

 どうしてできなかったのですか? お金がなかったから? 時間がなかったから?

白木 後回しにしていたのです。世界一周旅行は大学院に行く前の春休みにまとめて行こうと思っていて。でも、途中で「貧困を救うのは援助ではなくビジネスだ」と思い立って、結局大学院に行かずに日本に帰ってきたので、その機会を逸してしまいました。

 そうだったんですね。

白木 だから、そのときの後悔を今のビジネスで実現しているのです。学生時代のときにお金もスキルも知識もなくて達成できなかったことを、今ならできる。時間をかけてでも「できる」になっている。そういうことが嬉しいですね。