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翻訳者が語る『ブラック・スワン』
原書発売から訳書発売までに見たこと

【第60回】 2009年6月29日
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『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』(上下巻)ナシーム・ニコラス・タレブ[著]望月衛[訳]定価・各1890円(税込)

 2007年春に原書のThe Black Swanが発売されてから2年が経った。その間、金融市場は大荒れし、金融機関はバタバタとハエのように落ち、著者のナシーム・ニコラス・タレブの名前がマスコミに出るようになり、ブラック・スワンはヘッジファンド用語の一つに挙げられるようになった。ついでに、ウェブ上でもあちこちで『まぐれ』や『ブラック・スワン』やタレブの名前が見られるようになった。

 訳書のあとがきを書くとか、ばっちり決まる訳を思いつかない言葉に定訳はあるか調べるとかの都合があって、たびたび「タレブ」とか「ブラック・スワン」とか「黒い白鳥」とかでウェブを検索してみた。そこでわかったことがある。ウェブ上で本書に言及しているブログやサイト、実は次のパターンが多い。

(a)まったく読んでいない。ブルンバーグ・ニュースとか、他の人のブログに出ているのを見たってことだろう。ブログは日々の雑感を書くところみたいだからかまわないわけだが、書いてらっしゃることを見れば読んでないのはバレバレなんだし、恥ずかしくないんだろうか?

(b)流し読みしただけ。これはぼくが翻訳担当で、一言一句もらさず隅々まで読んだせいでそう思うのかもしれない。本なんてそんなじっくり読む人たちではないってことでしょう。でも感想文は書きたくて、書いたら誰かに見てもらいたいみたいですね。

(c)全部読んだけど語り口または日本語訳または内容が気に食わない。語り口が気に食わないって人たちには、それは残念でした、投資は自己責任ですから、まあ今度本を買うときはまず立ち読みしましょうねとお慰めするぐらいしかできない。

 これ以外にも、全部読んで内容に同意、または気に入ったというのももちろんある。それから、全部読んだうえで内容が気に食わないという部類の人たちなら、中身のあることを言っている可能性があるのでご意見を伺うに値すると思う。でも、そういう人たちのことをここで書いてもぼくが面白くない。そこで、以下、よく見る勘違いとか、ちゃんと読んでないがゆえのはずし方をいくつかあげつらって遊ばせていただくことにする。

(1)「サブプライム危機を予測した本」。たしかにタレブは証券化商品市場が崩れた2007年の春より前からCDOは危ないとか証券化商品は危ないとかと言っていたような気がするが、『ブラック・スワン』にそういう話が直接出てくるかというと、実はそうでもない。タレブが危機を予言したなんていうのは、どちらかというと矮小化だろう。今度何かが起きたときにタレブが違うことを言っていれば、この手の皆さんは「だまされた」だの「えらそうなことを言っておいて」云々だのと言い出すんじゃないか? 人を勝手に占い師に分類しておいて、外れたと言っては勝手に騒ぐ、まことにお祭り好きな人たちである。

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