資本主義では、価格はこう決まる

『資本論』には、いくつか重要な理論があります。

1. 商品には、「価値」と「使用価値」がある
2. 需要と供給のバランスがとれている場合、商品の値段は「価値」通りに決まる

 これが第1回で紹介した、『資本論』のひとつ目のポイントである、「価値と使用価値の違い」です。順番にひも解いていきましょう。

1. 商品には、「価値」と「使用価値」がある

 マルクスは、取引をするものは「すべて”商品”である」としました。みなさんが今朝食べたパンも、会社で購入したパソコンも、時間つぶしに入ったスターバックスのコーヒーもすべて「商品」です。

 一方で、「商品」にならないものもあります。道端に落ちている小石は商品にはなりません。山奥のキャンプ場の近くに流れているきれいな小川の水も、商品ではありません。ぼくが描いた絵も商品になりません。

 小さい石だから商品にならないのではありません。小さい石でもパワーストーンとして売っていることもありますね。大きさの問題ではありません。

 水だから商品にならないのではありません。コンビニでは「おいしい水」が売られていますね。また、ぼくが描いた絵は売れなくても、有名画家が描いた絵は商品になります。

 つまり、同じ種類のものでも、商品になったりならなかったりするのです。この違いは何なのでしょうか?

 それが「価値」と「使用価値」なのです。「価値」と「使用価値」を持っていれば、そのモノは商品になり、持っていなければ商品にはなりません。

 では、その「価値」とは? 「使用価値」とは?

 まず、理解しやすい「使用価値」について説明します。「使用価値」とは、「使って感じる価値」という意味で、それを「使うメリット」のことです。つまり「使用価値がある」とは、「それを使ったらメリットがある、満足する、有意義である」という意味になります。

 たとえば、パンの使用価値は「おいしい」「空腹が満たされる」などで、小麦粉で練られて焼いたモノが使用価値を持つのは「人がそれを食べて、空腹が満たされるから」なのです。

 この「使用価値」は、次に出てくる「価値」とは全然違う意味ですので、注意してください。

 次に、「価値」です。この言葉は要注意です。マルクスが言う「価値」は、ふだんぼくらが使う意味ではありません(ぼくらが使う「価値」という言葉は、マルクスが言う「使用価値」のことです)。