前回は、麻生政権の経済政策の問題点を説明しました。一言で言えば、非正規雇用の失業対策などの弱者救済に終始し、新しい雇用を創り出す、経済の成長を促進する、といった観点の政策が全くないのです。今回は、そうした面から具体的にどのような政策が必要であるかを考えたいと思います。

無責任な政策議論は
止めましょう

 トヨタ自動車が今期は営業赤字になると発表しました。11月の日本の輸出額は前年同月比で26%減と過去最大の減少を記録しました。景気悪化を示すデータがどんどん明らかになっています。このような状況では、政府が金融政策や財政政策を総動員して景気テコ入れに取り組むのは当たり前ですが、それに加えて成長産業を作り出して新規雇用を創出する努力も必要なはずです。

 しかし、マクロ経済の専門家の中には「規制緩和して民間の創意工夫に任せておけばいい、余計な政府介入は不要」という無責任なことを言う人がすごく多くて、びっくりします。今や、米英仏などの主要国では、金融に代わる新たな成長産業と雇用吸収源を作り出すべく、政府が積極的な役割を果たしつつあることを考えると、いかにも呑気だからです。

 そうした人たちの話を聞いてでしょうか、改革派と称する政治家の方々の発言も、これ程の景気後退の渦中にいるにも関わらず、未だに消費税増税、埋蔵金、行政改革といった小泉政権の頃と同じ内容に終始しています。景気の良かった小泉政権の頃と今とで発言が進化していないのは、残念であると同時に驚くべきことです。そして、メディアもこうした状況を一切批判しません。政府が弱者を救済さえしていれば、それで満足なのでしょうか。いい加減こうした無責任な政策議論は止めるべきではないでしょうか。

これから重要なのは
“intangible sector”

 それでは、どのような分野を成長産業にすべきであり、そのためにどのような政策が必要なのでしょうか。巷で言われているような環境/エネルギーやICTはもちろん重要な分野であり、政府がこれまで以上に積極的に関与していくべきです。ただ、これらはどちらかと言うと、海外市場をも視野に入れた次世代の基幹産業の候補であり、特に直近の雇用創出という点を考えると、それだけでは不十分ではないでしょうか。

 私は、それらの基幹産業候補に加え、英語で言うintangible sectorの育成も不可欠だと考えています。うまい日本語訳が思いつかないのですが、強いて言えば“無形財産部門”でしょうか。