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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

集団的自衛権の行使容認で国民の命は守れるか?
その本質は「他国と戦争に突入しやすくなる」こと

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第83回】 2014年6月9日
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 この連載では以前、「特定秘密保護法」について論じた(第72回を参照のこと)。これは思いのほか反響があり、共同通信を通じて、「識者評論」をさまざまな地方紙に書かせてもらった。これらの論考を読んだ方々は、筆者が特定秘密保護法に反対の立場だと考えていると思う。しかし、よく読んでもらうとわかるのだが、実は、特定秘密保護法に反対と書いてはいない。

 論考の主旨は、特定秘密保護法の成立後に、日本のジャーナリズム・国民の本当の戦いが始まる、というものだ。ジャーナリズムは、「特定秘密保護法案が成立すると、逮捕を恐れて委縮し、国民の『知る権利』が失われる」と主張してきた。しかし、その真意が「法律が成立したらジャーナリズムは権力批判をやめる」ということであってはならない。

 ジャーナリズムには、国民に真実を伝えない権力の片棒を担いでいたという歴史がある。そして、歴史を根拠にした彼らの主張は、まるでジャーナリズムは権力の前には無力だと聴こえる。だが、歴史を教訓とするならば、「権力による情報統制がどんなに強まっても、ジャーナリズムは怯まず権力批判を続けなければならない」ということであるはずだ。たとえ、これから何人逮捕者を出すことになろうとも、権力に対して批判を続けるべきだということだ。

 英国にも、特定秘密保護法に相当する「公務秘密法」がある。しかし、ジャーナリストを有罪とした事例は過去ないという。英国のジャーナリストは、権力が言論統制を試みても、委縮することはない。また、国民が権力行使を不当だとみなした場合、政権は容赦なく次の選挙で敗れ、政権の座を失ってしまう。だから、英国では政権が権力濫用を安易にできないのだ。

 日本は戦後、特定秘密保護法のような法律を制定し、運用する経験を持っていない。成立した法律の内容に問題が多いのは言うまでもない。しかし、この法律は国家安全保障上、必要なものでもある。だから、完璧な法律ができないから絶対ダメというのではなく、まず法律自体は成立させるべきだ。その上で、ジャーナリズムなど国民の徹底した批判を継続し、権力濫用を許さず、実効性のある運用ができるものに法律を練り上げていくべきだ。これが筆者の論考の真意なのである。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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