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6月9日 18時0分
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キャリートレードのすすめ - 日本株へのインプリケーション - 広木隆「ストラテジーレポート」

朝刊コラム「新潮流」
「最近のストラテジーレポートはつまらない」とよくいわれる。相場のことしか書かれていないからだ、という。投資レポートなのだから、それがフツーだろうと思うけれども、読者にご満足いただけないとすれば、それは当方が至らないということだ。謹んでお詫び申し上げます。

つまらなくなったのには理由がある。マーケットメール朝刊で「新潮流」というコラムの連載を始めたせいである。そちらに気力・体力・知力 ‐ 最後の力はほとんどないけど ‐ を奪われて、凝ったレポートを書く余力がなくなってしまったのである。

僕は怠惰だからストラテジーレポートの更新はせいぜい週に1回くらい。しかし、書くときは書く。レポート1回あたりの分量が多い。読者からのクレームでいちばん多いのが「話が長い」「長すぎて読む気がしない」というものである。

朝刊コラム「新潮流」はその正反対である。毎日書く。文字数は600文字程度。長くても原稿用紙2枚に収まる量を目途としている。一応、証券会社のストラテジストが書くコラムなので、社会、経済、マーケット関係の時事ネタを取り上げ、起承転結、4段落構成でまとめる。一見、関係のない話から入って本題に触れ、最後はオチがつく。もしくは余韻を残す。つまり、新聞の一面コラム(朝日「天声人語」、読売「編集手帳」等)に倣ったものだ。

始めてから3週間ほど経った。やってみて分かったのだが、これ、結構キツイ。マーケットメール朝刊の配信作業は毎朝8時前。それまでに原稿をあげなければならない。通常は前日の夕方から書き始めるのだが、適したネタが見つからなかったり、構成が気に入らなかったり、思うように筆が進まない。僕は「書き溜め」ができない性格である。その場、その場で思ったことを思った通りに書く。毎回毎回、綱渡りで書いている心境だ。

七転八倒しながら書いているマーケットコラム「新潮流」、ぜひお読みください。(バックナンバーはマネックスラウンジにアーカイブしてあります。)どうせなら、継続的にお読みください!(マーケットメールの登録はこちら

フツーの投資レポートに成り下がってしまったストラテジーレポートですが、こちらのほうも引き続きご愛読、よろしくお願い致します。

というわけで、フツーのレポートのように、フツーに相場のことを語ろう。フツーに考えると、取り上げるべき最近の重要イベントは欧州中央銀行(ECB)の追加緩和と米国の雇用統計であろう。

マイナス金利の衝撃
米国の雇用統計はきわめて穏当な結果となったので、解説は別の機会に譲る(例えば「月刊マーケットの歩き方」間もなくオンデマンド配信します)。ECBが打ち出した追加緩和のほうが特筆に値する。ECBは先週開催した理事会で

1)マイナス預金金利を含む追加利下げの実施
2)条件付き長期流動性供給オペ(TLTRO)の開始
3)資産担保証券(ABS)購入プログラムの準備作業開始
4)固定金利・無制限供給オペの延長
5)証券市場プログラム(SMP)に基づく国債購入の不胎化中止

から成る追加緩和パッケージを発表した。

特に市場が注目した利下げについては、主要政策金利のリファイナンス金利を0.1%引き下げ過去最低となる0.15%とすることを決めた。上限金利の限界貸出金利も0.75%から0.40%に引き下げた。また預金金利をゼロ%からマイナス0.1%に引き下げた。マイナス金利といわれてもピンとこないかもしれない。民間の銀行がECBに余剰資金を預けると利息を受け取るのではなく、逆に手数料を徴収される。手数料を払って貸金庫を借りるようなものだ。これではどの銀行も余剰資金をECBには預けない。行き場所を失くしたおカネは企業向けの貸出に回るはず ― 果たして思惑通りいくだろうか。世界が見守る壮大な経済実験が始まった。
ところが市場はいたって平静である。すべて予想の範囲内だったからだ。僕はこの項の見出しを「マイナス金利の衝撃」としたが、市場にとっては衝撃でもなんでもなく、むしろそのことのほうが僕には衝撃的だった。預金金利をマイナスにする案は以前から取沙汰されていたが、僕は本当に適用するとは思わなかった。市場は「予想の範囲内」と平静を装うが、僕にはかなり危険な賭けに踏み出したように思えてならない。

マイナス金利の狙い
ECBがここまで思い切った金融緩和に踏み切るのは、ユーロ圏の低インフレが一向に改善する兆しがないからだ。なにしろ物価上昇率は0.5%、デフレリスクが見え隠れする状況である。

その低インフレの原因であるユーロ高を是正する ― それがECBによる金融緩和のひとつの目的である。しかし、容易ではないだろう。デフレと円高をいやというほど経験したわれわれ日本人は肌感覚で分かる。ユーロ高が低インフレを招いている面もあるが、逆に言えば低インフレだからユーロ高になっている面もある。デフレ=モノの値段が下がる=おカネの価値が上がる=為替の通貨高、という構図である。

ECBは、ユーロ圏の銀行が企業向け融資に慎重なことも域内経済が停滞しデフレリスクを孕む要因と見ている。だからこそ預金金利をマイナスにして銀行の資金を融資に向けさせようとしたことに加えて、域内企業への融資積み増しを公約する銀行に、低利の長期資金を最大4年間にわたって供給することも決めた。

しかし市場では「銀行が余剰資金を抱えたからといってすぐに融資が増えるわけではない」との指摘も多い。この点もわれわれ日本人が経験したことである。おカネがないから貸し出せないわけではない。銀行は営利企業であって慈善事業をやっているわけではない。自らのリスクリターンの見積もり、すなわち損得勘定でカネを貸す貸さないを決めている。借りる企業の側だって資金使途がなければ借入のインセンティブがない。

ここでのポイントは「単なる金融緩和では通貨高は是正できず、銀行にカネを与えたからといって貸出がすぐに伸びるわけではない」という、至ってフツーのことをドラギ総裁が分かっていないわけがないだろうということである。なにしろ、彼は魔術師である。これまでさんざん鮮やかな「ドラギ・マジック」を披露してきた。魔術師マリオ・ドラギならば、市井のエコノミストがしたり顔で解説するようなことは、百も二百も三百もじゅうぶん承知のうえであろう。

ではドラギ総裁の真の狙いは何か?僕は、「銀行のキャリートレードを奨励すること」だと思う。

キャリートレード
キャリートレードというのは、低金利通貨で調達した資金を高金利通貨で運用して利ざやを稼ぐ手法のこと。一時期は円キャリートレードが全盛だった。いまや日米欧、世界の主要通貨はすべて「ゼロ金利」だから、どんな通貨で調達してもいい。

このキャリートレード、どんどん「拡大解釈」が進んでいる。本来は、「低金利通貨で調達⇒高金利通貨で運用」が基本だが、最近は運用先の多様化が進んでいる。低金利で調達した円を新興国通貨に替えて株で運用する。それは「キャリートレード」ではなく、フツーの新興国投資ではないか?とも思うが、なんでもあり、の状態だ。

ドラギ総裁は市場を「利用」するのに長けたセントラル・バンカーである。「バズーカ砲」ともいわれたLTROを放ち欧州債務危機を収束させた手腕は語り草だが、そのメカニズムは市場の「キャリートレード」を利用することだった。銀行に低利のカネを与え、彼らに南欧国債を買わせたのである。

今回もまた金融機関にキャリートレードをさせようという腹だろう。まず、金融機関が資金を中央銀行に預ける経路を一切断った。マイナス金利は預金金利だけでなく、超過準備や政府預金などを含めてユーロシステム内にある同様の預金に関して適用される。当初、預金金利だけのマイナス金利なら、金融機関の資金は(利息がつかない)当座預金に流れるとも言われたが、そこの経路も断たれた格好だ。

日銀の異次元緩和の場合、日銀が市場から国債を買い取ってその代金を金融機関に渡す。ところが金融機関はその資金をそっくり日銀の当座預金に預け入れる。日銀の当座預金残高は136兆円強と過去最高に積み上がっている。これをECBは許さない点で、日米の量的緩和と一線を画する政策となっている。

兎にも角にも、銀行の手元にカネを置くのがECBの政策だ。さて、そのカネをどうするか?手っ取り早いのは市場で運用することだろう。個別企業向け融資の稟議書を書くより、ある国の国債を買う方が楽である。
域内企業への融資積み増しを公約する銀行に、低利の長期資金を最大4年間にわたって供給する - それが新型のLTRO、条件付きLTRO(TLTRO)と呼ばれる。一方で2011年に導入が決まった前のLTRO(3年物長期流動性供給オペ)の資金は返済が進んでいる。おカネに「色」はないから結局、同じことなのだ。金融危機で中銀から借りたカネは返すという「外面」を保ちながら、新型のTLTROで有利な資金を中銀から借りる。しかし、それは企業向け融資にしか使えないのでは?その通り。しかし、おカネに「色」はないから、結局どんぶり勘定になる。銀行だってまったく企業向け融資をしないわけではないので、その分のカネがTLTROで降ってくれば、浮いた分を市場運用に振り向けるだろう。

事実、欧州の国債利回りは軒並み低下している。イタリアやスペインの国債利回りは過去最低を記録した。

日本株へのインプリケーション
世界中でキャリートレードが加速している。「利回り」が急速に食いつぶされている。これは目先的には日本株にとってマイナスである。日本の金利はいち早くゼロ近傍にあり、もうここから下がらないため、金利差縮小は円高要因となるからだ。

但し、円高といってもたかが知れている。先日のレポートで述べた通り、円高もピークを打った感がある。それよりも、世界的な金利低下がもたらすリスクオン・ムードのほうが円相場と日本株相場にポジティブに働くだろう。年初来、世界的に出遅れていた日本株も、ようやく水準訂正の動きが出始めたが、この流れはしばらく続くだろう。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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