実に10年がかりで共闘体制が築かれることになった。今年4月、日系自動車メーカー14社で構成される業界団体、日本自動車工業会が「国際標準検討会」を立ち上げたのだ。

部品・設計の標準化で“共闘” <br />日系自動車が張る欧州包囲網ドイツ自動車工業会(VDA)発案の規格が世界標準となる事例は多い(写真はマルティン・ヴィンターコルン・VW会長)
Photo:Picture Alliance/AFLO

 新組織では、メーカーの枠を超えて、自動車開発・生産に関わる四つの分野で標準化作業を進める方針だ(詳細は後述)。ドイツの自動車メーカーなど、とかく欧州勢に主導権を奪われがちな“世界標準”を獲得するのが狙いだ。

 かねて日本の製造業は国際規格の標準化戦略が苦手とされてきた。実際に、携帯電話や非接触型ICカードなどの標準化で主導権を握ることに失敗した。

 日本の劣勢は自動車業界でも同様で、独完成車メーカー(フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW)や独自動車部品メーカー(ボッシュ、コンチネンタル)が中心メンバーであるドイツ自動車工業会が発案した規格が世界標準となった事例は多い。例えば、自動車の電子安全性に関する国際規格「ISO26262」や自動車の通信ネットワークの国際規格「FlexRay(フレックスレイ)」がそうだ。ドイツでは、各メーカーの技術陣の間で、横の連携が強く、大手5社で一定のルールを決め、標準化の作業を進めてしまう。

 今回、国際標準検討会の立ち上げを主導した山下光彦・日産自動車取締役は、「鉄鋼の世界では、日系高炉メーカーの世界シェアはわずか7%にすぎないにもかかわらず、日本基準が世界標準となっている。翻って、日系自動車メーカーは世界シェア35%を握りながらもその存在感を示せていない」と警鐘を鳴らす。