「ミニノートパソコン(PC)が、国内市場の勢力図を塗り替えた」(田中繁廣・BCN取締役)

 調査会社BCNによると、9月のノートPCの販売台数シェア(全国25の量販店のPOSデータ集計)で、ソニー、富士通、NEC、東芝の「四強」の一角を切り崩して、台湾エイサーが14.7%のシェアを獲得し、ソニー、富士通に次いで3位に入った。

 ミニノートPC(液晶の大きさが10.2インチ以下)に限ってみると、同社のシェアは50%を超えており、2位の台湾ASUS(アスース)の32%を大きく引き離している。高級感のあるデザイン、万全の供給体制、他社に比べて数ポイントは高いと見られる販売店へのマージンなどが奏功した結果だ。

 エイサーの勢いは日本市場だけにとどまらない。6月から順次投入した「Aspire one」が全世界で大ヒットし、発売当初500万台としていた2008年の世界出荷台数を700万台に上方修正した。500万台の出荷計画を掲げるASUSを抜いて、トップに立つ見込みだ。

 また、同社の9月単月のノートPC全体の世界出荷台数は380万台と過去最高を記録し、「コンシューマー向けノートPCの単月の出荷台数では、首位の米ヒューレット・パッカード(HP)を抜いた可能性もある」(業界関係者)。

 競合他社も指をくわえて見ているわけではない。9月以降、米デル、中国レノボ、東芝、韓国サムスン電子なども続々と参入し、年末までにNECも商品を投入すると見られている。

 ブーム絶頂のミニノートPCだが、不安要素もある。まず、最大の市場である欧州で、「ノートPCの在庫が重くなってきている」(浅野浩寿・IDCジャパンPCsシニアマーケットアナリスト)点だ。今後欧州で販売が鈍化すれば、エイサーはじめ各社は、販売計画の下方修正を迫られる可能性もある。

 さらに、懸念されていた既存のノートPCとの「食い合い」も始まった。「10.2インチ以下と15インチクラスへの二極化が進みつつある」(菊地友仁・日本HPモバイル&コンシューマビジネス本部プロダクトマネージャ)。

ミニノートPCは低価格で利幅が薄いため、「今後は売り上げ台数が増えても、事業収益は圧迫される」(氷室英利・ディスプレイサーチディレクター)ことになりかねない。

 ミニノートの比重を高めるエイサーの戦略は吉と出るか凶と出るか。全社が戦線に出揃うこれからが本当の勝負だ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛 )