脅し文句の「間」にワナが仕掛けられている

 悪質クレーマーは、「どうしてくれるんだ!」などといきなり大声を上げたり、テーブルを叩いたりすることがあります。それは、相手をパニックに陥れて自分のシナリオ通りに事を運ぶためです。

 ところが、その前に「ちょっと待て!」というフレーズを使う、百戦錬磨のクレーマーがいます。あらかじめ相手の注意を引いておき、怒鳴り声のダメージをより大きくしようという魂胆です。いわば、必殺の右ストレートの前に繰り出す、左ジャブのようなものでしょう。

 ここで注意してほしいのは、「ちょっと待て」という呼びかけに対して、まわりにいる人すべてが反応することです。「えっ、なに?」と声の主を探すのです。

 クレーマーは、そのタイミングに合わせて怒鳴り声を発します。つまり、周囲を巻き込むことで、パニックを拡散させるわけです。

 クレーマーの標的にされた人は突然、怒鳴られたことによる恐怖とともに、「これ以上こじれると、みんなに迷惑がかかる」という焦りが生まれます。その結果、平常心を失い、完全なパニック状態に陥ってしまいます。

 また、クレーマーは「沈黙」を巧みに操り、こちらを窮地に追い込みます。怒鳴り声を上げておびえさせたあと、一瞬、口をつぐむのです。時間にして数秒間ですが、その間にこちらの不安はどんどん膨らむでしょう。

 きっと、あなたにも経験があるはずです。誰かと口論になりかけたとき、相手が急に黙り込むと不安になりませんか? これが電話だったら、なおさらでしょう。相手の表情が見えないだけに不気味です。

 クレーマーはこうした心理を利用するわけです。