中国の為替政策は袋小路に迷い込んだ――。

  「ワシントンのインナー・サークル(政権中枢)は今、もっぱらこの話題で持ちきりだ」(米財務省幹部)という。

 今年に入ってから対ドルで年12~15%のペースで上昇するかに見えた人民元。しかし、その勢いはここにきて緩やかになりつつある。

 管理型変動相場制を採用する人民元は、中国人民銀行(中央銀行)が毎朝、取引基準となる「中間値」を発表し、そこから上下0.5%のみの変動が許されている。4月10日には1ドル=7元台を超えて、初めて1ドル=6元台に突入したが、6月12日の中間値は、1ドル=6.9015元と前日比で0.28%の伸びに止まった。新聞各紙は「連日過去最高値を更新」と報道するが、実際は「牛歩戦術」と表現したほうがいい有様なのだ。

 中国政府関係者は、「米国向けの輸出が伸び悩む今、輸出産業にいっそうの打撃を与える人民元高の加速は歓迎すべき流れではない」とペース鈍化の理由を説明する。

 確かに、1-3月の中国の輸出は、新興国向けに支えられて前年同期比21%の伸びとなったものの、米国向けは急速に鈍化し伸び率はゼロ、欧州向けも微増に止まった。1-3月のGDP成長率も、昨年の11.9%から、10.6%に減速。「(世界有数の工場集積地である)珠江デルタでは今年に入ってから、工場の閉鎖が相次ぐ」(日系企業関係者)ほど深刻な事態になりつつある。ただでさえ四川大地震の経済への影響が懸念される今、中国当局としては、人民元の上昇ペースを上げにくいというのが本音であろう。

預金・貸出金利の引き上げ効果も期待薄
トランスミッション・メカニズムの機能不全

 しかし、その本音を貫けないところに、袋小路と形容される所以がある。中国の為替政策の舵取りを難しくさせているもの、それはほかならぬインフレの進行である。

 直近2008年5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比7.7%と4月の8.5%から鈍化した模様だが、それでも過去11年来の高水準にあることに変わりはない。それどころか、上昇するエネルギーコストや原材料コストの消費者転嫁はこれから本格化するとみられている。通年のCPI伸び率は、2007年の4.8%から急加速し、6%~7%に達しそうだ。