国内の人口減少による市場縮小や、貸し出し競争の激化による収益逓減への懸念が高まり、再編の機運が高まっている銀行業界。その中での、りそなホールディングスの戦略を聞いた。

――昨年4月に日銀が異次元緩和を行ってから、金融庁などから「融資を増やせ」というプレッシャーを相当かけられていることもあって、銀行界では今、貸し出し競争が激化しています。2014年3月期の決算では、国内部門で、融資や国債運用の利回りが経費を下回る「逆ざや」に陥るメガバンクまで出ました。こういった競争環境について、率直にどう思われますか。

りそなホールディングス社長 東 和浩 <br />考え方が共有できれば再編も否定しないひがし・かずひろ/1957年生まれ。82年、埼玉銀行入行。2003年、りそなホールディングスの財務部長に就任するなど財務・企画畑が長く、公的資金 の返済策についても当局との交渉などの実務面を任された。09年同副社長に就任、13年4月から現職(りそな銀行社長兼務)
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 まず本音の話をしておくと、国や当局が(融資増加の)プレッシャーをかけてるっていうのは全くないんですよ。銀行としては、どんな環境にあっても預金などで資金を調達して貸し出しをしない限りはビジネスにならないんだから。貸し出し増加の努力は当然、ビジネスとしてやっていることで、誰かに追い立てられているとか、背中を押されているからやっている、というのは全くないですね。

 確かに競争は激しいと思う。総資金利ざやについては低下しているんだけど、それなりの努力をして、ちゃんとスプレッド(利ざや)を確保していく。「競争が激しいからスプレッドが下がるんです」っていう風に環境のことだけ言っててもしょうがない。

 今、やらなくちゃいけないのは、「我々の商品にどうやって付加価値をつけるか」ということなんですよね。単純に「お金を貸し出させてください」なんていう話だけしていては、当然、「じゃあ安いところから借ります」ということになってしまう。事業承継の相談に乗ったり、取引先の商流やサービスの流れをつかんだり、それから設備に対するアドバイスを加えていくことで、プラスアルファの情報をつけていくというのが、金利競争に入り込まない要因なわけですよ。