さる9月、グーグル共同創設者のセルゲイ・ブリンが新しく始めたブログで告白した。「遺伝子を調べたら、僕が今後パーキンソン病を発病する可能性は20~80%」。

  実はこの直前、ブリンの母が同病を発病。これを受けて、ブリンは自身の遺伝子をテストしたところ、結果は平均より高いと出た。ただし、この告白はグーグル株主に向けたリスク情報の開示というよりは、ブリンの妻が共同創設した会社「23andMe」の宣伝の方により役立ったことだろう。

 23andMeは、現在世界中で次々と生まれている消費者向け遺伝子テスト会社のひとつである。2006年にシリコンバレーで設立され、現在数10人の社員を抱えている。Aラウンドの約9万ドルの出資を行ったのは、グーグル、ジェネンティック、そしてベンチャーキャピタル会社のニューエンタープライズという有名どころばかり。何と言ってもグーグルの出資とブリンの妻という話題性によって、競合会社に一歩抜きん出ているのである。

 人間が持つ23組の染色体を社名になぞらえた23andMeは、自社の業務を「パーソナル遺伝子サービス」と名付けている。それは次のような内容だ。

 遺伝子テストを希望する個人は、まず同社のウェブサイトで登録し、399ドルの料金を支払う。すると数日後にキットが到着する。キットには試験管がついてくるので、これに唾液を入れて返送。3~4週間後に連絡を受け、再び同社サイトから自分のアカウントにアクセスすると結果がアップロードされているというわけだ。

 23andMeの遺伝子テストで識別ができるのは90種類以上の疾病。その中には、パーキンソン病、乳がん、肺がん、前立腺がん、胃がん、心臓発作、糖尿病、緑内障など、誰もが不安を抱いているような病名がいくつも並んでいる。いや、それだけではない。肥満、記憶力に加え、アルコールやヘロイン依存度、脱毛症、運動神経、痛みへの感度などの身体的傾向、祖先の病歴、自分の民族的背景など。たとえ病気でなくとも関心を持たざるを得ない実に幅広い情報を得ることができるのである。