頭痛もちの山田ハナコさん(40歳)は、診療所で定期的に診察を受け、スマトリプタンコハク酸塩錠という片頭痛の薬を処方してもらっている。

 薬を調剤してもらうのは、自宅の近くにあるA薬局だ。昔ながらの小さな町の薬局で、高齢の女性薬剤師がひとりで対応している。訪れる患者はまばらで、ゆっくり話せるのが気にいって、いつもここに通っている。

 4月以降、1回の薬代や調剤報酬の合計は5110円。70歳未満の山田さんの自己負担割合は3割なので、窓口では1530円を支払っている。

 ある日のこと、いつものように診療所で診察を受けたあと、A薬局に行くと休業中。「どこでも同じだろう」と、24時間365日営業している大手チェーンのB薬局に行ってみることにした。

 B薬局には薬剤師が何人もいて、パーテーションで仕切られた窓口がいくつもあり、ひっきりなしにやってくる患者に対応している。処方せんを渡し、待つこと十数分。名前を呼ばれて会計をしに行くと、自己負担分として1700円を請求された。

 領収書を見ると、薬代や調剤報酬の合計は5690円。疑問に思って薬剤師に尋ねてみたが、計算に間違いはないという。調剤してもらった薬の種類や数は、A薬局と同じなのに、なぜ医療費の自己負担額に170円の差が出たのだろうか。

高齢化に対応するために
薬局に求められる在宅支援

 日本の医療費は全国一律の公定価格で、その時々の物価上昇率や賃金水準も考慮されるが、価格決定にもっとも影響を与えているのが国の医療政策だ。

 医療機関も、調剤薬局も、自分たちの報酬が高くなるものは積極的に取り入れるので、国はその時々で充実させたい医療行為や調剤行為の報酬を高くして誘導している。

 産科医不足で救急車の受け入れ不能問題が浮上したときは、産婦人科の診療報酬を高くしたり、大きな病院で働く勤務医の労働問題が表面化したときはカルテを記入するための事務職員を雇用するための診療報酬を導入したりした。