日本全体でグローバル人材の不足が叫ばれる中、外資系企業のリーダーが日本企業のマネジメントへ転進するキャリアが目立つ。日本企業の最優先課題といえる「経営のグローバル化」の実現に、外資系出身者はどのような貢献をしていくのか。20年以上の外資系企業でのキャリアを経て、現在ワールドの海外本部を率いる足立光氏に聞いた。

なぜ、日本企業に転じたのか

  日本企業の最優先課題は何か。それは間違いなく「経営のグローバル化」です。欧米市場を対象とする製品のグローバル化ではなく、今求められているのは真の意味での世界展開を可能にする経営のグローバル化であり、そのための人材のグローバル化のはずです。

外資系企業出身者の危機感<br />――日本についての「知識」がなければ<br />“根無し草”になる足立 光(あだち・ひかる)
ワールド 執行役員 海外本部本部長

1968年アメリカ・テキサス州オースチン生まれ。一橋大学商学部卒業後、P&G入社。ブーズ・アレン・ハミルトン、ローランドベルガーシュワルツコフ ヘンケル社長を経て、2013年より現職。外資系企業での経験を日本と日系企業の変革に活かしたいとの想いからGAISHIKEI LEADERSのオーガナイザーとしても活躍する。

 それなのに、世界を見渡せば、日本および日本人の存在感が低下しています。新興国が台頭する中、「その他大勢」にくくられるようになっている。この「世界の現実」に危機感を感じたことが、外資系でのキャリアを捨て、日本企業に転じた最大の理由です。

 資源の乏しい日本が世界市場で存在感を示すには、経済力でリードしていくしかありません。それには、日本企業のマネジメントのグローバル化が必須であるはずなのですが、遅々として進んでいません。これは非常にまずい。

 私はこれまで「日本人として、外国人に負けない」ことを念頭に仕事をしてきました。そんな私が今まで日本企業ではなく外資系企業で働いてきたのは、外資系のほうが短期間に多様かつグローバルな経験ができる(自分が成長できる)、また外資系の中で日本人として活躍することで日本人の世界での地位向上に間接的に貢献できると考えたからです。

 ところが40代になってから、内省したり、自分にとって最後になるかもしれない仕事について考えたりするようになりました。そうこうするうちに、日本社会、日本企業の現状を見るにつけ、自分にできることをしたいというマグマがふつふつと湧いていることに気づいたのです。日本の社会、日本企業にもっと直接的に貢献できる仕事がしたい。これが率直な気持ちです。ワールドを選んだのは人との縁です。