コミュニケーションは海外では教えられている

佐々木 一般に、テクニックとか技術っていうと、カッコ悪いイメージがないですか。「技術を使ってデートに誘う」って、やっぱりダメなことなんでしょうか。例えば、車を作る技術とか、ネジをこうすると回転が速くなるとか、歯車の形をこうすればより動力が伝わるよ、というのは技術ですよね。それはとてもいいことで、伝承する。
 それなのに、コミュニケーションにおけるテクニック、というと、「すごく軽い」みたいなイメージがあるのは、どうしてなんでしょうか。

コミュニケーションは技術だ、学べるんだ<br />【佐々木圭一×福岡元啓】(後編)

福岡 これは、さっきの法則の話もそうなんですが、結局、板に付くか、付かないか、というだけのところだと思うんです。野球に喩えると、イチローさんのスイングをその場でテクニックとして教わっても、板についてヒットできるわけではない。なぜなら、イチローさんは素振りを何年も毎日、やっているから。つまり、自分のものにするには、大変な努力が必要になるということです。

 だから、テクニック自体はいいと思うんです。それが、自然体の自分のものになるプロセスがいるんだろうな、と思うんです。そうなったとき、そのテクニックは、佐々木さんがおっしゃったような「軽いテクニック」にはならなくて、その人のものになっていくんだと思うんです。

 テクニックでやっているのではなくて、その人の中身から出てくるようになれば、自然に「ああ、この人はこういうやり方をする人なんだ」となる。それを結果的に言語化したら、テクニックになる、というだけの話だけですよね。

佐々木 それが、「テクニックだけ」にならないよう、どうやって身につけてもらうか、を考えて作った本が『伝え方が9割』なんです。

福岡 シチュエーションが最初から自分でイメージできないと難しさはあるでしょうね。いろんな場面に出くわしたとき、テクニックから、自分のやり方になっていく。だから、そういう場面が多いといいですよね、その人に。

佐々木 最近、コミュニケーションについて、世界はどうなっているのか、ということが気になっていて、アメリカについて調べたことがあったんです。するとわかったのは、アメリカは小学校3年生くらいから、コミュニケーション・メソッドが教えられている、ということです。どうやったら相手にうまく伝わるか、勉強をするんです。

 どうしてかというと、人種がいっぱいいるから。放っておいたら、ケンカが起きてしまいかねない。だから、どうやって人と人とがコミュニケーションをしていくべきなのか、を若いうちからトレーニングを受ける。伝え方を学ぶんです。

 日本人って、「アメリカ人はもともとDNA的にしゃべるのが上手なんでしょ」というイメージがあるんですが、実はそうじゃないんです。トレーニングがあって、できるようになっているんです。