ドイツ・シュトゥットガルトにあるダイムラー本社。隣接するのは、同社カンパニーカラーの落ち着いたシルバーに輝くメルセデス・ミュージアムだ。

 8ユーロ(約1000円)の入場料を支払った後、音声ガイダンス機を受け取りエレベーターに乗る。最上階7階へ昇りながら、「カッパカ、カッパカ」と馬の走る音が流れる。

 扉が開くと、そこは1885年。馬車時代から自動車時代への社会大変革期である。最初の展示品は、カール・ベンツが開発した三輪移動体「モートル・ヴァーゲン」。これぞ世界最初の自動車だ。その心臓部は1気筒・1馬力のガソリンエンジンである。偶然にもほぼ同時期に、ベンツが本拠としていたマンハイムのほど近くで、ゴッソトープ・ダイムラーもガソリン自動車の開発に成功していた。後年、両社は第一次自動車産業界再編期に合併することになる。

 このドイツ発の自動車産業はアメリカでの大量生産期、日本高度成長期を経て、124年後の今年、史上空前の大転換期を迎えている。

 BRICsなど新興国経済の急成長による自動車世界市場の「パラダイムシフト」、若者たちの「クルマ離れ」という世界的な現象、そして自動車開発・製造の観点では「主動力の電動化」が進行するなど、トヨタ自動車・豊田章男社長を筆頭に日系自動車メーカー幹部が近頃やたら口にする「100年に1度の自動車産業界の変革」が訪れている。

 筆者は、11月23~25日まで中国・広東省・広州市の第七回中国広州国際汽車展覧会を取材した後、成田を経てドイツに飛んだ。

 同国中西部デュッセルドルフに近いエッセン市で開催された、欧州最大級の自動車アフターマーケット見本市「エッセンモーターショー」を取材するためだ。この10数年間、ブラバス、ロリンザー、カールソンなどベンツを中心としたドイツ車改造車ビジネスが日米欧で盛んになった。しかし、不況と世界各地の富裕層の「心変わり」によって、こうしたビジネスモデルは急速に体力を落としている。筆者が毎年訪れてきたこのエッセンモーターショーも青息吐息の状態で、来年の開催が危ぶまれているほどだ。