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新聞・週刊誌「三面記事」を読み解く

フーゾクが去り、ちょんの間が消えた街
そして横浜・黄金町はアートの街に生まれ変わった

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第79回】 2014年6月28日
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 二〇年以上も前のお話。あるフーゾク関係の知りあいに声をかけられた。

 ねえねえ××くん、と彼は言い、バイトしない? と続けた。伏せ字には私の名前が入るのだけど、そのころの私は無名もいいところで、時代はバブルだってのに月の生活費を稼ぎ出すのがやっとの落ちこぼれ記者だった。

 なものだから、知りあいは私に同情して、彼が関わっているソープランドのお仕事でも紹介しようとしているのかしら。

 なんて思ったのだけど、違っていた。今度、新しく吉原のお店で働く女性がいる。年齢は二〇代後半。私と同い年で、なかなかに可愛い子らしい。芸能人で言えば××××に似てるかな、などと知りあいは言う。写真を見せてもらったら本当に似ていた。

 ついては、その子の身体検査をしてもらえないだろうか、というのがバイトの内容だった。

 「何ですか、身体検査って? スリーサイズでも測るんですか?」
「身体検査は身体検査でしょ。要するに試してほしいわけ。バイト料はいいよ、一回×万円でどう?」

 もうおわかりと思いますが、こーいうお仕事があるのだそうです。

 わからない方のためにもう少し説明すると、ソープランドで働くにはそれなりの技術指導があるらしいのだけど、研修を終えても、お客さんを取るにもちょっと心許ない。というか、新人だからがちがちに緊張している。

 そこで、お客さんを装ってお店に行き、さまざまなサービルを受けたのち、その子が通用するかどうかを見極めるお仕事があるのだとか。サクラに近いのですが、知りあいは、それを私にやらないかと持ちかけたのでした。

 「ソープで働く子ってのはね、初めてのお客を絶対忘れないんだよね。やりなよ、あとあとサービスしてもらえるよ」
 「あー、無理無理。私、フーゾク行ったことないし」
 「フーゾクを知らんのか、だったらなおいい。下手にあっちこっち知ってるやつより情報が新鮮だからな。頼む、やってくれ。まだ客を取ってない子だぞ。ぎこちないし、初だし、いいぞぉ。きみ、またフラれたばかりなんでしょ」

 それまではこの方が身体検査をしていたのだけど、年齢も五〇代後半にさしかかり、あまり頑張れなくなったのだとか。それで私に白羽の矢が立った。断りましたけどね。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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