株式レポート
6月30日 18時0分
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年後半の日本株相場 - 広木隆「ストラテジーレポート」

掟破り

1年の半分が過ぎた。時の流れの速さに驚くばかりである。明日から7月。年後半の相場はどうなるだろう。まず、10日前に書いた朝刊コラム「新潮流」をお読みいただこう。

◆株式相場の季節的アノマリーでもっともよく知られているのは「Sell in May (5月に売れ)」であろう。これには「秋に戻ってこい」という続きがある。株式市場のパフォーマンスを調べると、上半期(冬から春)が好調で、下半期(夏から秋)が不調であることがはっきりしている。だから相場が天井をつける春の終わり(すなわち5月)に売って、相場が底を打つ秋にまた市場に戻って来いというのだ。10月の終わりに市場に戻るのがもっとも効率がよいことから「ハロウィン効果」とも呼ばれている。
◆日本株の過去のパフォーマンスを調べると1-6月の上半期が良く、7-12月の下半期が悪いという明確な傾向が認められる。不思議なのは年度の上半期(4-9月)下半期(10-3月)ではなく、暦年のそれである点だ。上半期だけ株の運用をして、「あとの半年は寝て暮らす」のが良い ― 「デカンショ節投資戦略」と名付けられた投資法を推奨する例もある[榊原(2011)]。
◆上半期のパフォーマンスが良く、下半期のパフォーマンスが悪いのはなぜだろう。これらの時期にぴたりと重なる事象は、昼夜の長さである。上半期は冬至から夏至へ昼の時間が長くなっていく。反対に下半期は夏至から冬至へと夜が長くなっていく。秋から冬にかけて不調をきたす季節性感情障害(SAD, seasonable affective disorder)という症状が知られているが、これには夜の長さが関係しているらしい。そして株式市場が下半期に不振となるのも夜の長さと関係したSADの影響ではないかという分析がある。
◆一方、夏はバカンスの季節、みんな海や山に出かけてしまう。株取引なんてやっている場合ではないから夏枯れでパフォーマンスが落ちるのだという説もある。明日は夏至である。明日を境に夜が長くなっていくが、本格的な夏はこれからだ。ここは夏らしく明るく、SAD説よりバカンス説を支持しようではないか。え?どっちにしろ下半期のパフォーマンスは悪いのではないかって?アノマリーなんて気にするのはやめましょうよ、だって夏なんだから!って今日のオチは強引過ぎるかな(汗)。
(【新潮流】第24回 夏至

自分でも書いている通り、なんとも締まらない終わり方である。アノマリーを気にするのはやめよう、と言ったものの、今年は気にしてもいい。例年通りならば、上半期のパフォーマンスが良く、下半期のパフォーマンスが悪い、ということになるが今年はそうならないだろうと思うからだ。

グラフ1は日経平均の月別リターン(1949年からの平均値)である。一番、リターンが高いのが1月。これは別名「1月効果(January Effect)」として知られており、世界共通のアノマリーだ。次にリターンが高いのは4月。1月はお正月で新年おめでとう、4月は新年度で入学や就職おめでとう、めでたい時期には気持ちも明るくなり株価もあがりやすいのかもしれない。



もう少しまともな理由を探すとすれば、1月は外国人投資家にとって新年度入り、4月は日本の機関投資家にとって新年度入りだから、新しい資金が配分されたりして投資行動がとりやすくなることが関係しているのかもしれない。

月次パフォーマンスの2トップが上半期にいるのだから、上半期のパフォーマンスがよくなるわけである。ところが、今年はそうなっていない。日経平均は年初から急落し1月は1300円以上も下げた。リターンはマイナス8%強とダントツで上半期のワースト1位だ。4月も500円超の下げ。マイナス3.5%のリターンとなりワースト2位である。

今日、6月末の日経平均終値は1万5162円。昨年末が1万6291円だったから、この上期のパフォーマンスは1000円超の値下がりだ。例年、上半期の好パフォーマンスを牽引する1月と4月が今年は足を引っ張った。そう言えば、今年は「Sell in May (5月に売れ)」もなかった。
海外ではどうか。2013年11月11日付けレポート「ストラテジスト紀行 Vol.2 オータム・イン・ニューヨーク (Autumn in New York)」で紹介した米国株のアノマリーがある。それは中間選挙前に株が弱くなるというアノマリーである。表は 1946 年から米国のダウ平均の四半期リターンを大統領就任からの年別に集計したものだ。



これを見ると、大統領の就任2年目の第 2・3 四半期(すなわち中間選挙の直前)が群を抜いてパフォーマンスが悪いことが見てとれる。おそらく、中間選挙を控えて、政治的な不透明感が株式市場の重石となるのであろう。

ところが今年はどうか。今年の第 2四半期の米国株市場は、パフォーマンスが悪いどころかダウ平均やS&P500は連日の高値更新が続いた。こちらも過去のパターンが崩れている。

今年の上半期、例年見られる季節的な株価の動きがすべて逆のパターンとなっている。そう考えれば下半期のパフォーマンスは振るわないというアノマリーも今年は逆にいくのではないか。なにしろアノマリーだから理論的な根拠があって、言っている話ではない。そんな気がする、というだけである。言うまでもないことだが、相場というのは多分にギャンブル的要素が含まれる。これも言うまでもないことだが、ギャンブルにはそういう「勘」や「直感」が大事である。理屈では説明できない「流れ」を読む力というか、そういうものである。

年後半の株価レンジ

今年前半、日経平均はざっくり言って1万4000円〜1万5000円のレンジ相場だった(グラフ2)。年後半、はじめの7-9月は1万5000円〜1万6000円にレンジを切り上げるだろう。レンジの下限は1万5000円としたが、じゃあ絶対に1万5000円をビタ一文も割らないかといわれればもちろんそんなことはない。ただ、1万4800円〜1万6200円とバッファーをもったレンジを示したところでたいした意味はないので、わかりやすく1万5000円〜1万6000円と置いたのだ。



その後10-12月は1万5500円〜1万6500円にさらにレンジを切り上げるだろう。今年の前半がレンジ相場のなかをもみ合いながら底値を固めたのと同じ動きで、今年の後半ももみ合いながら少しずつレンジを切り上げていく展開を予想する(グラフ3)。



なぜか?株価を決めるもっとも根本的な要素である企業業績の見通しが、昨年と違って急激に変化しないからである。現在のところ今期の増益率は当期利益ベースで2%増益。QUICKコンセンサスベースでは6%増益だから、徐々にこれに近づいていくイメージを持っている。最終的には今年度も2桁増益(10%超の増益率)になると思うが現段階では市場はそこまで見ていない。

予想増益率が徐々にしか変わらないのだから、株価がとり得る値である予想レンジも、徐々にしか動かないというのは理にかなっているだろう。我々は激しく動いた昨年の相場が、残像として目に焼き付いているが、むしろ昨年のような大相場のほうが例外で、業績見通しの変化に沿った株価上昇のほうが、相場としてつまらなくはあっても、資産運用の対象としてはよほど健全なものだと言える。
歴史的大転換

業績見通しが徐々に上方修正され株価レンジもそれに連れて切り上がる。そうした堅調相場の背景として、前2回のストラテジーレポートで強調したのは、新成長戦略で示された「企業の稼ぐ力を取り戻す」という点である。

やや大袈裟かもしれないが、あとで振り返ったときに、この成長戦略の決定が日本株式市場の大きな転換点となったと語られる日が来るだろう。未来への挑戦と副題がつけられた「日本再興戦略 改訂 2014」は、「日本の『稼ぐ力』を取り戻すこと」を「鍵となる施策」のいちばん初めに謳っている。その部分をもう一度、ここに引用する。

「日本企業の「稼ぐ力」、すなわち中長期的な収益性・生産性を高め、その果実を広く国民(家計)に均てんさせるには何が必要か。まずは、コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準のROE の達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である。特に、数年ぶりの好決算を実現した企業については、内部留保を貯め込むのではなく、新規の設備投資や、大胆な事業再編、M&A などに積極的に活用していくことが期待される。」
(「日本再興戦略 改訂 2014」)

この観点からの施策が続々と打ち出されている。社外取締役の選任を促す会社法の改正、公的年金の運用改革の議論、日本版スチュワードシップ・コードの導入などである。これらはいずれも企業のROE向上に寄与するものである。加えて、ROEの高い企業が組み入れられる新しい株価指標、JPX日経400を重視する投資家や企業が増えているのもこうした流れに沿った動きである。

端的に言えばROE向上が国策として掲げられたのである。それに呼応するように企業も自社株買い、増配、設備投資、M&Aなど有効な手元資金の使途を考え始めた。こうした日本企業の変化を敏感に嗅ぎ取った長期投資家がじわりと日本株買いに動いている。

東京証券取引所が先週発表した6月第3週(16〜20日)の投資部門別株式売買動向によると、海外投資家は3週連続で買い越した。買越額は2534億円で、前の週2倍弱に膨らんだ。前回のレポートで信託銀行の買い越しが続いていることを述べたが、信託銀行は8週連続の買い越しだ。外国人と日本の機関投資家が同時に買い越している状況はちょっと記憶にない。この点だけをとっても日本株相場の大転換と言っていいだろう。



政府、企業、資本市場がまさに一体となって投資家に支持される株式市場に生まれ変わろうとしている。これが大いなる転換点でなくて何であろうか。

大いなる転換点のわりに、レンジの切り上がり方はゆっくりである。これは構造改革なのである。一気に相場が吹き上がるようなものではない。ゆっくりだが、長期的に、じわりと進んでいくだろう。

繰り返すが、ROE向上は国策となった。ROEを上げるというのは株価を上げるというのと同義である。つまり、国策として株価を上げると言っているのに等しい。「国策に売りなし」である。
官製相場

官民一体となったROE向上への取り組みが内外の機関投資家に評価されないはずがない、と僕は前回のレポートで述べたが、冷めた見方をする向きからは「官製相場」との声も出ている。その最たるものは、やはり公的年金に日本株を買わせるGPIFの運用見直しだろう。

もうひとつの「官製相場」は消費増税の決定に絡むものである。安倍政権は今年の年末までに来秋8%⇒10%へのもう一段の消費税率の引き上げを決断しなくてはならない。引き上げを決めるためには、この夏から秋にかけての景況感を絶対に悪化させることはできない。無論、「アベノミクスの通信簿」と言われる株価にも意識は払われるだろう。

官邸主導の景気対策、株価対策との連動プレーで期待されるのが日銀の役割である。このところ日銀による追加緩和期待というのは、すっかり鳴りを潜めている。

最新のQUICK月次調査では「追加緩和なし」を見込む回答が最多となった。しかし、今後の物価動向次第では秋の展望レポート後に再度、追加緩和の議論が高まるかもしれない。と、いうのも昨年のいわゆる「異次元緩和」の際に宣言した「2年でマネタリー・ベースを2倍、2%のインフレを目指す」その2年の期日が近づくからだ。2年で2倍・2%は分かった、その先はどうするのかについての表明を市場は黒田総裁に求めるだろう。いちばんあり得るのが、時間軸の延長だろう。「2%の物価目標が安定的に定着するまで緩和を続ける」とコミットメントを示すにとどめる。それで市場が満足するかどうかは、その時の状況次第。いまから云々するのはやめておく。

リスク要因

下期を展望するうえで、鍵となる重要イベントは上述した通り、1)消費増税の決定と、2)日銀の追加緩和議論の再燃である。

それよりも、もっと目先のリスク要素を挙げるとすれば、ドル円相場とボラティリティの低下であろう。

ドル円は長期サポートラインである200日移動平均を下回っている。ボラティリティは歴史的低水準。ここまで下がるだけ下がったのなら、あとは上がるしかない。早晩ボラティリティが急上昇する危険性を誰もが指摘している。

これらリスク要因については次回述べることにする。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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