欧州危機は過去のものか

 次の図表1は欧州の10年国債の利回りを示すが、2010年以降、大幅に拡大した利回り格差が2012年以降、急速に縮小した。これだけ急に信用スプレッドの収縮が進むなか、欧州危機への意識は市場ではほとんど話題にならないくらいになったのが、この2年間の大きな転換だ。

 それでは、市場での大幅な改善の背景には抜本的な解決策の実現があったのだろうか。実際には、2年前には想像もつかない形での改善の形になった。

債務危機は過去のもの?<br />欧州の「日本化」がもたらす副作用はなにか<br />――高田創・みずほ総合研究所チーフエコノミスト(資料)Datastreamよりみずほ総合研究所作成

ユーロ危機の解決の理想形

 そもそも、欧州の債務危機の背景には域内の経常収支の不均衡、すなわち、ドイツの黒字と南欧諸国の赤字問題があった。次の図表2は、ユーロ圏の経常収支の不均衡からの改善を示す概念図である。