年金財政にはさまざまな要因が影響するため、どの変数が最も重要な影響を与えているのかは明確に把握しがたい。

 最も基本的な変数は、人口である。人口は、経済活動全般について大きな影響を与えるが、社会保障、とりわけ年金については本質的な影響を与える。ただし、ここで重要なのは、人口総数ではなく、人口構造である。

完全賦課方式なら
所得代替率は半分になる

 社会保障財政を考える場合には、高齢者人口に対する若年者人口の比率によって人口構造を見るのがよい。前者が社会保障給付を通じての受益者、後者が保険料や租税を通じての負担者になるからだ。

 以下では、国立社会保障・人口問題研究所による日本の将来推計人口(平成24年1月推計)のうち、出生中位(死亡中位)推計を見よう。

 15~64歳人口(百万人)(以下、労働年齢人口という)をaで表し、65歳以上人口(以下高齢人口という)をbで表す。

図表1に示すように、abは、2010年の2.77から一貫して下落を続け、40年には1.5を割り込んで1.496となる。これは、10年の値の54.0%だ。60年には1.275にまで低下する。

 低下が激しいのは現在から40年頃までの期間であり、とりわけ20年頃までだ。これは、いわゆる団塊世代の動向の影響である。

abに分けて10年と40年の比をとると、aは0.708(年率減少率1.18%)、bは1.312(年率増加率0.94%)である。

高すぎる運用利回りの想定は、<br />年金財政破綻の可能性を隠ぺいする