昨年放送された「半沢直樹」に続き、同じ作家である池井戸潤氏が原作のドラマ、「花咲舞が黙っていない」の放送が終わった。主人公の杏が演ずる花咲舞の決め台詞は、「お言葉を返すようですが」であるが、さて実際の銀行でそれは通用するのだろうか。筆者は、そもそも、そんな言葉が話題になるような現状では、金融立国など覚束ないと考えている。

「花咲舞」が人気を博した理由

 筆者は、連載第37回で、「体験的検証!ドラマ半沢直樹の虚実」と題して、ドラマ「半沢直樹で描かれた銀行員の実態について、実体験を織り込みつつ少し突っ込んで論じた。これに対しては、メガバンクのごく一握りの役員からは猛烈な反発があったと漏れ聞いたが、その一方、掲載後すぐにフェイスブックの「いいね!」が1000件を超すなど、一般読者からの圧倒的な支持を感じた。また色々な銀行の先輩や後輩からも「匿名を前提に」ではあるが、驚くほどの支持をいただいた。

 その記事での筆者の結語は、「日本の銀行のカルチャーが、正論が通り、横並びではなく革新的な言動が評価されるように変わることこそ、金融立国の第一歩だと信じている。一度しかない人生、行員諸君は不正義に目をつぶるのではなく、行内ポリティックスの困難に打ち克ち、半沢直樹のようにスカッと正義を貫いてほしい。そういう後輩たちが続々と出てきて、日本の銀行のカルチャー変革が成し遂げられることを大いに期待したい。加えて、銀行界でも導入が進んできた社外取締役など外部の人材が、彼らの正義を擁護してくれることを祈ってやまない」というものであった。

 ドラマ「花咲舞」は、小さな支店が主な舞台となっており、銀行用語が飛び交う特殊な世界を描いていたにもかかわらず、多くの視聴者からの支持を得た。その理由は、やはり、理不尽な圧力に屈することなく、まさにスカッと正義を貫く主人公の姿勢が評価されたからだと思われる。ドラマの終盤では、行内ポリティックスの権化のような真藤常務にも臆せず、日々真面目に働いている銀行員を代弁して物申すシーンが出てくるので、見ていて気持ちがスカッとしたという視聴者もさぞ多かったことだろう。銀行員だけでなく、一般のサラリーマンにとっても、上席に物申すことは、とても勇気が要ることだけに、視聴者は銀行関係者以外にも広がっていたのであろう。