2014年に3回目を迎えた将棋の電脳戦。コンピュータ・ソフトが1勝4敗と圧倒的な強さを見せた。将棋はこのまま人工知能の軍門にくだってしまうのだろうか、と筆者などは懸念してしまう。

 そうした素人の考えに対して、羽生名人の次の言葉が振るっている。「そのときは桂馬が横に飛ぶとか、ルールを少しだけ変えればいいんです」(週刊ポスト、2014年5月2日号)

 不世出の天才の言葉だけあって「なるほどなぁ」と感心する。室町時代まであったとされる「醉象」という駒を復活させる手もあるわけだし。

 現代の将棋は洗練され、必要最小限の駒の数とルールの下で行なわれている。それらは人が定めたものなのだから、人が変えることも自由だ。

 ほんの少しルールを変更するだけで、コンピュータ・ソフトに蓄積された膨大なデータ(具体的には棋譜)はすべて灰燼に帰す。流行(はや)り廃(すた)りはあるものの、将棋や囲碁はこれからも筆者を楽しませてくれそうだ。

 そうした娯楽を普及させる手段であるエレクトロニクスにも、流行り廃りがある。次の〔図表 1〕と〔図表 2〕は、内閣府『統計表一覧:消費動向調査』に基づいて、ロジスティック曲線を描いたものだ。

 ロジスティック曲線の描きかたについては、拙著『高田直芳の実践会計講座/戦略ファイナンス』(日本実業出版社)367ページ以降を参照願いたい。拙著では、ロジスティック曲線が急速に立ち上がるものをベストセラー型、そして、ゆっくりと普及するものをロングセラー型と分類している。

 〔図表 1〕で描かれるカラーテレビ(緑色の折れ線)はベストセラー型であり、ルームエアコン(青色の折れ線)はロングセラー型である。いずれも相対的な解釈である点に注意してほしい。

 乗用車(赤色の折れ線)が、図表の右端(2014年)で80%を割りそうな傾向を示しているのが興味深い。若者の車離れを暗示しているようだ。