「とうとうきたか」とアパレル業界関係者はショックを隠せない。

  1883年創業の老舗、小杉産業が2月16日についに自己破産を申請し、破産手続きを開始するに至ったのだ。ゴルフのジャック・ニクラス氏の愛称から生まれた「ゴールデンベア」ブランドは団塊の世代を中心によく知られる。

 同社は1990年代から業績が低迷し、2005年1月期には債務超過に転落。ジェイ・ブリッジの支援を受けて再生に取り組んだものの、スポーツ用品のミナミなどの買収で赤字はふくらみ、07年に筆頭株主が、伊藤忠商事から25%出資しているレゾンキャピタルパートナーズへと変わった。伊藤忠が小杉を直接支援してきたわけではないが、生産や販売面でバックアップしてきた。

 しかし、経営立て直しには至らず、主力の婦人服「ジャンセン」などの販売不振で赤字が拡大、あえなく資金繰りにも行き詰まった。

 小杉の破綻は同業他社にとって対岸の火事ではない。特に小杉の主要販路でもあった百貨店の苦戦は深刻だ。昨年の衣料品売上高は前年比13.8%も落ち込み、19ヵ月連続して前年割れが続いている。大手のオンワードホールディングスは09年2月期の通期の営業利益を42%減益へと下方修正した。

 経営再建中のレナウンに至っては、09年2月期は45億円の営業赤字を見込んでいる。虎の子の「アクアスキュータム」の売却をはじめ、本社などの資産売却、16の不採算ブランドの撤退や370人強の人員削減に踏み切った。

  中村実社長に「もうほかに売るものはない」と言わせるほどのリストラだが、金融筋では「ここ20年、何度も同じ言葉を聞いている」という冷ややかな声も少なくなく、いばらの道ではある。

 漏れてくるのは「最近はヒット商品がまったく出ない」(大手アパレル首脳)という嘆き節ばかり。衣料品が底なし不況に突入した。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子 )