2012年にギャラップは、従業員エンゲージメントに関する衝撃的な調査結果を発表した。米国でも世界全体でも、その水準があまりに低かったのだ。データを分析した筆者らは、その主な原因を有能なマネジャーの不足であるとし、マネジャーを選ぶ際に「生来の資質」を軽視すべきではないと述べる。


 ギャラップの調査結果によれば、企業にとって最も重要な意思決定事項の1つは「誰をマネジャーに任命するか」である。ただし我々の分析によれば、企業はたいていその判断を間違えるようだ。実際にギャラップの調査では、マネジャーとしての適性を備えた候補者を選び損ねる割合は、82%に達しているのだ。

 無能なマネジャーがもたらす金銭的負担は、1年間で莫大な金額に上る。そのような人材を多く抱えれば、会社は破たんしかねない。この大きな問題に対する唯一の対策は、先手を打つこと、つまり人選の段階で正しい判断を行うことだ。「資質」に基づいてマネジャーを登用すれば、企業は繁栄し大きな競争優位を獲得する。

 ギャラップの推定によれば、事業ユニットごとの従業員エンゲージメントのスコアの7割は、マネジャーの良し悪しで決まる。このことは、世界全体の従業員エンゲージメントが深刻なまでに低い原因にもなっている。ギャラップが2012年に実施した2つの大規模調査の結果によれば、仕事に意欲を持っている従業員の割合は、米国でわずか30%(関連記事)、そして世界全体ではなんと13%にすぎなかった(関連記事。リンク先のマップによれば、日本のエンゲージメントの水準は7%)。さらに悪いことには、これらの低い数字は過去12年間、ほとんど変わっていない。つまり、世界各国の従業員の圧倒的多数は、職場で成長も貢献もできずにいるのだ。

 ギャラップは過去20年間、数百社を対象にパフォーマンス調査を実施し、2700万人の従業員、250万超の事業ユニットについてエンゲージメントを測定してきた。そして業界や規模、地域を問わず、ある謎を必死で解明しようとする企業幹部たちを見てきた――「同じ組織のなかで、チームによってパフォーマンスにこれほど違いが生じるのはなぜか」。ほとんどの企業内ではパフォーマンスに激しい(そして無益な)ばらつきが見られるが、その主な原因にマネジメントの一貫性の欠如がある。この「ノイズ」がリーダーたちを苛立たせる。従業員のパフォーマンスが予測できなければ、効率を損ねるからだ。

 しかし、このノイズ(パフォーマンスのばらつき)をなくすことは可能だ。ギャラップは、事業ユニットごとの従業員エンゲージメントが、重要な業績指標に連動することを発見した。その指標には、顧客関連指標、収益性・生産性・品質の向上(欠陥の削減)、離職率の低下、常習欠勤の減少、窃盗などによる在庫ロスの減少、事故の減少などが含まれる(関連記事。より詳細なPDF資料はこちら)。つまり、すべての事業ユニットで従業員エンゲージメントを向上させれば、万事が改善する。