ベトナム 2014年7月11日

ベトナムの日本人社会では人もお金もつながっている「ホーチミン日本人村」の事件簿【第2回】

日本で15年間の編集者生活を送った後、ベトナムに渡って起業した中安さん。現在、ホーチミン市に住む日本人は約1万人いるといわれるが、まだまだ狭い世界。それだけに日々さまざまなウワサを耳にしたり、軋轢が生じることも。「日本人村」で何が起きているのか?

 「ホーチミン日本人村」の事件簿・第2回をお届けする。今回も、名前はすべて仮名で、かつ話の趣旨を損なわない範囲で、設定などは変えていることをあらかじめご承知おきいただきたい。写真も、本文とは関係のないものを掲載した。

関連記事:「ホーチミン日本人村」の事件簿【第1回】

事例4:知人の会社の社員が求人に応募してきた

 ホーチミンで人材紹介会社を営む古川さんは、事業を拡張するため、日本人社員の募集を出すことにした。なかなかこれといった応募者がおらず、諦めかけていたところに応募が来た。

 ところがその名前を見て驚いた。彼は、古川さんの同業他社A社の社員・深田さんだったのである。古川さんは、社の社長とも顔見知りで、深田さんを高く評価しているのも知っていた。辞表は既に出してあるらしく、職務経歴書には、既に退職日も明記されている。

 深田さんを採用すれば、戦力になってくれるのは間違いない。しかし、A社の社長は決していい気持ちはしないだろう。自分が採用しなければ、どうなるか。既に退職は決まっているのだから、同業のライバル会社が採用するに違いない。

 A社の社長に相談して、一言断りを入れることも考えたが、結局、いろいろ悩んだ挙げ句、深田さんの応募を断った。深田さんは、古川さんの競合他社に入って大いに活躍。その姿を見るたびに、古川さんは、自分の判断が正しかったのかどうか、悩んでしまうそうだ。

事例5:知人の会社の仕事を発注されてしまった

 こんな例もある。ある機関から「この仕事は毎年、同じ会社に頼んでいるのだが、形だけでも競争入札の形にしたいので、見積もりを出してくれないか」と言われ、見積もりを出したら、発注が来てしまって慌てた、という人がいた。

 元々、受注していた会社はもちろん知り合いで、その会社の仕事を取ってしまうのは本意ではない。それに、どうしても取りたい仕事でもなかった。にもかかわらず、受けざるを得ない。さらに元の受注先からは「あの会社はウチの仕事を横取りした」と言われてしまったのである。

ホーチミン市の観光名所①:聖母マリア大聖堂 フランス統治時代に建てられたもの。使用されたレンガは、すべてマルセイユから運ばれたものだという。一部分の壁のレンガを抜いて通風孔を作るなど、南国の気候に対応する工夫が見られる。平日の8:00~11:00と15:00~16:00は観光客にも公開されている【撮影/中安昭人】

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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