W杯決勝ドイツ-アルゼンチン戦は大会のフィナーレを飾るに相応しい好ゲームだった。

 W杯の決勝は最強国決定戦ではあるものの凡試合になることが多い。大会7試合目で選手たちは疲労のピークにある。動きにキレがなくなったり、集中力を欠いてミスが出がちになるからだ。とくにこの試合は準決勝でブラジルに大勝し中4日の休養が与えられたドイツと、オランダと延長戦でも決着がつかずPK戦の激闘を行ったうえ中3日の休みしかないアルゼンチンの対戦。ドイツの一方的な試合になってもおかしくなかった。

 だが、両チームの選手たちは疲れを少しも感じさせない闘志あふれるプレーをし続けた。試合はドイツが主導権を握り、アルゼンチンが守ってカウンターを狙うという展開。両チームが置かれた状況からすれば、こうなるのも当然だ。前後半90分で得点はなく、延長戦にもつれ込んだが、どちらも失点を怖がる素振りは見せず、攻める姿勢を持ち続けた。スコアレスでもスリリングなシーンが常にあり、90分間があっという間に過ぎた。

 さらに見ごたえがあったのが延長戦だ。疲れから選手の動きは若干鈍ったものの、トラップやパスは実に正確。不用意なミスはなく、緊張感あふれる攻防が続いた。解説の岡田武史前日本代表監督が「解説者がこんな表現をしてはいけないのかもしれないが、“すごい”としか言いようがありません」とコメント。もうひとりの解説者・福西崇氏も「すごい」を連発していた。ふたりとも元日本代表で国際試合の延長戦のきつさを身をもって知っている。そんなふたりだからこそ極限状態の中、正確なプレーを続ける両チームの選手を「すごい」としか表現できなかったのだろう。その実感がこちらにも伝わってくるような濃密な延長戦だった。

 試合の均衡が破れたのは延長後半8分。ドイツFWシュールレが左サイドをこの時間帯では信じられないスピードでドリブル突破し、中央にクロスを上げる。それを途中出場でフレッシュなゲッツェが胸トラップから左足ボレーでゴールを決めた。角度のない位置からの難しいシュートだったが、こういう芸当ができる選手を最後に起用したレーブ監督の采配は見事というしかない。残り7分あまり、アルゼンチンの選手も疲れた体に鞭打って反撃を試みたが、タイムアップ。ドイツが6大会ぶり4度目の優勝を成し遂げた。