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7月14日 18時0分
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JPX日経400の投資戦略 - 広木隆「ストラテジーレポート」

スマートベータ

スマートベータという言葉をご存じだろうか?簡単に言うとS&P500や東証株価指数(TOPIX)のような時価総額加重で作られているインデックスに対するアンチテーゼである。

機関投資家の運用ベンチマークは大抵が時価総額加重インデックスである。日経平均をベンチマークにしている機関投資家は皆無と言っていい。ではなぜ時価総額加重なのかについては、事実上、深く議論されてこなかった。他に適当なベンチマークがないから、という消去法的選択だったと言える。

時価総額加重のインデックスをベンチマークとする理論的根拠がないわけではない。CAPMの帰結「マーケット・ポートフォリオが最も効率的なポートフォリオである」というのがそのひとつだろう。CAPMによれば、市場が均衡状態にあるとき、「マーケット・ポートフォリオ」は全てのリスク資産を時価額ウェイトで保有したものとなる。

CAPMのエレガントな理論は崇高であるとさえ言える。理論としてその頑健性は揺るぎない。だからこそ資産運用分野でのファイナンス理論は、CAPMをどう打ち破るかという点を目指して発展してきたのである。そのひとつの到達点がファーマ=フレンチの3ファクターモデルであり、昨今話題のスマートベータであると言えるだろう。

TOPIXの銘柄構成ウェイトというのは時価総額に応じて決まる。時価総額が唯一の決定材料である。しかし、時価総額が大きいというのはすでに株価が高くなっているということと同義であるから、割高に買われ過ぎた企業の株を多く組み入れる可能性も否定できない。その批判からスマートベータというアプローチが生まれた。別の機会にスマートベータについて詳しく触れたいと思うが、今日のテーマはJPX日経400である。JPX日経400は、いろいろな工夫がされたインデックスだがスマートベータではない。キャップがつけられてはいるものの、組み入れウェイトが時価総額を基準としているからである。

JPX日経400とは

JPX日経400についてよく知っている読者は、この項を飛ばしてもらって構わない。ここに記載していることは東証のホームページに書いてあることなどの要約である。

JPX日経インデックス400(略称:JPX日経400)は、日本取引所グループ・東京証券取引所・日本経済新聞社によって、2014年1月6日から算出が開始された株価指数である。2013年8月30日を基準(10,000ポイント)として計算されている。対象銘柄は指数名に含まれている通り400銘柄で、時価総額加重平均で計算が行われる。

指数の選定は、(1)スクリーニング(2)定量的な指標によるスコアリング(3)定性的な要素による加点(4)構成銘柄の決定の4段階に分かれている。

(1)スクリーニング
第1段階のスクリーニングも2つのステップに分けられる。まず、始めに以下の条件を1つでも満たす銘柄が指数の選定対象から除かれる。
[除外基準]
・上場後3年未満(テクニカル上場を除く)
・過去3期いずれかの期で債務超過
・過去3期すべての期で営業赤字
・過去3期すべての期で最終赤字
・整理銘柄等に該当

財務の健全性や業績の安定性が担保できない企業は指数の対象としてふさわしくないということだろう。続いてのステップで、①直近3年間の売買代金②選定基準日時点における時価総額の2項目から上位1000銘柄を選定し、選定対象のユニバースとする。

(2)定量的な指標によるスコアリング
(1)のスクリーニングで選定した1,000銘柄のユニバースからウェイト付した以下3項目の順位に応じたスコア(1位1,000点〜1,000位1点)を付与し、総合スコアを算出する。
・3年平均ROE:40%
・3年累積営業利益:40%
・選定基準日時点における時価総額:20%

(3)定性的な要素による加点
(2)のスコア付けの後、以下の3項目を勘案してスコアの加点を行う。
・独立した社外取締役の選任(2人以上)
・IFRS採用(ピュアIFRSを想定)または採用を決定。
・決算情報英文資料のTDnet(英文資料配信サービス)を通じた開示
※(2)の総合スコアのみによって選定を行った場合との差異が最大でも10銘柄程度となるような加点規模となり、あくまで定性的要素は定量スコアに対する補完的位置づけである。

(4)構成銘柄の決定
(3)の加点後スコアが高い順に400銘柄を選定して構成銘柄とする。
※毎年6月末時点を基準として8月に銘柄の入替を実施するが、前年度採用銘柄に優先採用ルールが設けられている。
JPX日経400のパフォーマンス

JPX日経400のパフォーマンスはTOPIXとそれほど大差がなかったが、ここにきて差が目立ち始めた。130兆円の資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がJPX日経400を日本株運用のベンチマークのひとつとして採用したことで追随する動きが出ているのだろう。JPXの採用銘柄をまとめて買い持ちするヘッジファンドが増えているとも聞く。

確かに有力な買い手がベンチマークとするなら、そのインデックスに沿った運用をすれば利益があがりそうである。ましてやJPX日経400にはROEが高い銘柄ばかりが含まれているのだ。これでうまくいかないはずがない、と思われるのだが…。

パフォーマンスがどうも物足りないのである。確かにTOPIXをアウトパフォームするにはしている。しかし、個人投資家は年金運用のファンドマネージャーではない。TOPIXをわずかに上回るだけでは、面白くない。

なにか良いアイデアはないものか、と思案していたら、某大手外資系証券のデリバティブ・トレーディングの部長さんがアドバイスをくれた。「これからJPX400に採用されそうな候補銘柄と、逆にJPX400から除外されそうな銘柄ではパフォーマンスにすごい差がつきますよ」

なるほど、すでにJPXに採用されている銘柄はみんな知っているし、もう買われてしまっている。これから採用されそうな銘柄と除外されそうな銘柄にフォーカスを絞るというのは良いアイデアである。

JPX400の銘柄選択の基準は前述の通りである。これをもとにスクリーニングすると以下の銘柄群が「採用候補」「除外候補」として抽出された。





このパフォーマンス格差は確かにすごい。仮に採用候補銘柄をロング(買持ち)して除外候補をショート(空売り)したら、 2ヶ月あまりで約8%のリターンが獲れていたことになる。グラフから分かる通り、除外候補銘柄も上昇しているので除外銘柄の絶対リターンはプラスである。だからこの銘柄群をショートするとヤラれる(損失が出る)ことになる。新規採用候補の買い持ちだけのほうがパフォーマンスはよくなるが、それはあくまで結果論。仮に相場が下がったらどうか?新規採用候補と除外候補とのパフォーマンスに格差が生じるということがポイントなのだから、このロング・ショート戦略は相場全体の方向性に影響を受けない(はずである)。上昇相場では空売りしなければよかったと思うし、下落相場では買い持ちしていなければ、と思うだろう。但し、買い売り両サイド組み合わせるから、どんな相場環境でも安定してリターンが望めるのである。

ROEが高い銘柄がJPXの指数に採用されているが、いわばそれは過去のデータである。相場は常に、「これからどうなるか」ということが重要なのである。

単純に「数字」だけのことを言えば、ソニーはJPXから外される可能性がある。日本株式市場を代表する新しい株価指数として期待されているJPX日経400にソニーが入らないというのは相当なインパクトがある。銘柄入れ替えは来月に行われる。目が離せない。と、同時にこのロング・ショート戦略の賞味期限もあと少し、ということである。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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