また、人材開発担当者は自ら現場へ足を運び、組織内を歩き回ることによって、声にならないニーズをくみ取ることも重要です。経営陣や現場のマネジャーたちから、ニーズとして語られないことでも、中長期的視点に立って、組織に必要なニーズを見定め、研修を実施していく必要があるからです。

 こうした人材開発担当者が探究するべきニーズは主に下記の3点です。

①経営陣のニーズ(戦略ニーズ) 
 組織的に決定された経営戦略からブレイクダウンされる研修ニーズ(例:海外への生産拠点異動のためのグローバル人材育成プログラム)

②現場のニーズ(事業ニーズ) 
 現場発の主に事業に関係する研修ニーズ(例:現場で必要な論理的思考やプレゼンテーションなどスキルに関する研修)

③人事のニーズ(組織ニーズ)
 長期的視野に立ち、組織の中核能力を維持し、優秀な社員を引きつけておくための研修ニーズ(例:製造業における技術教育、経営理念を学ぶ研修、ワークライフバランス研修)

 組織内にどんなニーズがあるのかは、組織の状態によります。人材開発担当者が研修の企画を考える場合、自ら現場へ足を運び、組織内を歩き回ってこうしたニーズを探索することが第一のステップです。

 なお、ニーズの探索を行う際は、単に「新しいニーズ」だけでなく、「失われたニーズ」にも着目してください。研修は一度やり始めると同じ内容で毎年繰り返されていく「惰性」が働きがちです。

 冒頭のA子さんの会社でも、何年も前から見直されることなく、同じ講師、同じ内容の研修が行われていました。研修は、どこかで見直さない限り、延々と増えていってしまいます。すでにニーズが失われているのに、惰性で毎年繰り返されている研修はないか、見直すべき研修はないかと、常に現状のニーズにマッチしているかどうか、という視点でニーズの探索を行うことも重要です。