詐欺のターゲットにされても
私はまだ強気だった

「登記関係の確認は、いつものM先生にお願いしたんじゃないのか?」
「いえ、今朝、ゴールドマン・トレジャーから急遽司法書士を替えてくれという依頼があって、先方が指定する司法書士にお願いしました」
「何でそんなことを許したんだ。あり得ないだろ」
「も、申し訳ありません……」

 大急ぎでゴールドマン・トレジャーに連絡を取らせたが、当然のごとく、電話は繋がらず、オフィスはもぬけの殻になっていた。6億円もの巨額詐欺に、まんまと引っかかってしまったのである。
 紹介者、仲介業者、売主、司法書士。出会いから半年余りにおよぶ、総出演者10名近い手の込んだ詐欺だった。

 今にして思えば、この詐欺事件は社長である私をターゲットにして仕組まれた罠だったのであろうと思う。独立して数年で売上げを一気に伸ばし、上場に向けて調子に乗っている杉本を狙って、「あのガキに一杯食わせてひと儲けしてやれ」という謀略だ。もっとも、本当に「今にして思えば」であるのだが、これほど大きな取引を社員に任せきりで、連日のように痛飲して朝遅い出社をしていた私につけ入る隙がなかったのかと言われれば、何の言い訳もできない。

 しかし、当時の私は強気だった。
「大丈夫だ。6億円の特別損失は痛いが、今のエスグラントならかすり傷レベルだ」
 私は深く反省することもなく、さらに上を目指していた。(続く)


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『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』

第2章 暗雲-- 「傲り」を象徴する出来事が<br />僕を蝕み始めていた【その1】<br />「6億円詐欺事件が示していた警告」

早すぎた栄光、成功の罠、挫折、どん底、希望……
「すべての経営者にとっての教訓だ」――藤田晋
「150%の力で走る起業家の現実を読んでほしい」――堀江貴文

起業した会社を上場させ、倒産して地獄を味わい、そこから復活するまでに経験した出来事から、私はたくさんのことを教えられた。 なぜ私は地獄を味わうことになったのか。 なぜ私は復活できたのか。 この5年間の出来事と、私自身が考えてきたことを、正直に書き留めておこうと思う。

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目次
○プロローグ  ベンチャー経営者であることを
○第1章 絶頂──ワンルーム販売から、総合不動産業。そして都市開発へ
○第2章 暗雲──「傲り」を象徴する出来事が僕を蝕み始めていた
○第3章 地獄──暗闇の断崖を転げ落ちながら必死でもがき続けた
○第4章 奈落──民事再生、自己破産、絶望しそうな淵の底で
○第5章 希望──2年間は修行と決めて真にやりたい事業を見つけ出す
○第6章 感謝──どん底で知った感謝とともに新しい道を歩いていく