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投資ファンドはどこに向かうのか 保田隆明

「守り」のMBOから「攻め」のMBOの時代へ【後編】

香山晋氏(コバレントマテリアル代表取締役社長)に聞く

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【最終回】 2008年3月13日
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ここ数年日本でもMBO(経営陣による企業買収)が増えてきており、件数ベースでは昨年は過去最高になった模様である。ただ、過去に日本で行われた規模の大きいMBO案件で、MBOを実行した理由として挙げられたものには「株主の目を気にせず思い切ったリストラをするため」というものが多かったため、MBOからは「業績不振」という言葉を連想しがちである。また、株式市場からは、MBOの目的として「敵対的買収防衛のため」と噂されることも少なくない。

MBOは仕方なく行うものであり、企業が自ら喜んでその選択肢を追求するということはイメージしにくい。しかし、東芝グループから独立を果たした東芝セラミックス(現:コバレントマテリアル)は、業績が好調な中、更なる成長を目指してわざわざ自らMBOという選択肢を取った企業である。日本企業がファンドを活用して今後の成長を模索するひとつのケーススタディとなると思われ、香山晋社長に話を伺った。今回はその【後編】をお届けする。

自社の戦略を理解してくれる
ファンドを選ぶ

香山晋(コバレントマテリアル代表取締役社長)
香山晋(コバレントマテリアル代表取締役社長)東京大学卒。1969年、東芝入社後、半導体の研究開発に従事。執行役員上席常務を経て、2004年、東芝セラミックス代表取締役社長に就任。2007年6月、MBO(経営陣による企業買収)により東芝グループを離れ、コバレントマテリアルとして新たに発足。現在も同社社長を務める。

――MBOの実行プロセスはどのようなものでしたか?

 当社は500億円の投資資金が必要であった。つまり事業拡大路線であるが、この事業戦略を理解してくれるファンドが必要であった。中には、当社がシリコンウエハ事業から撤収するはずだという決めうちでアプローチしてきたファンドもいたが、お断りした。事業撤収のお手伝い屋さんとしてのファンドの役割は、それはそれで存在するが、当社にとって事業の分割は全体的なバリューを減らしてしまうことを意味した。こういう議論を理解しない人も3分の1ぐらいいたが、ユニゾンは当社の事業モデルに興味を持ってくれた。また、当初よりスケールが大きな話となったので、カーライルも呼び込んだという構図だ。両ファンドの半導体業界に対する知見は優れていた。

 当社ではもともと東芝グループから外れて、独自に資金調達をすることをシミュレーションとして研究していたので、それが結果的にMBOの準備期間、モラトリアム期間となった。経営状況が悪くなったときに、ニッチもサッチもいかなくなってからやっとMBOを考えるというのでは、うまくいかないだろう。

 社内のMBO検討チームは40人ぐらいに膨れ上がっていた。デュー・デリジェンスでもファンドとがっぷりよつで協業できた。自立と成長、これがキーワードであり、攻めのためのファンド招聘だった。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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投資ファンドはどこに向かうのか 保田隆明

経済・金融分野のエバンジェリスト、保田隆明が、キーパーソンへインタビューを通して、海外と国内の投資ファンドの活動とその影響を検証していく。

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