今や「障害物リレー」と揶揄されているのが北京オリンピックの聖火リレーだ。中国政府のチベット抑圧に対する抗議を意図する妨害活動が行われたロンドン、パリ以降、より厳重な警備体制が敷かれたため、北米-南米(アルゼンチン)-アフリカ(タンザニア)と聖火は大陸間を一応無事に運ばれ、14日には中東・オマーンに入った。

 聖火リレーは8月8日のオリンピック開幕まで4ヵ月近く続く。今後はアジア諸国をまわり(日本は4月26日)、5月には中国本土入り。各都市を3ヵ月かけてリレーされる。妨害活動はいつ、どんな形で行われるか判らない。今のところ大事には至っていないが、譲歩の姿勢を見せない中国政府に反発して、妨害が過激化する可能性もある。リレーコースがある都市の関係者は、「なんとか無事に終わってほしい」と祈っているはずだ。聖火はまるでババ抜きのババ。前代未聞の事態である。

イメージ悪化に頭を抱える
スポンサー企業

 この状況が続くなら、同様の思いをオリンピック終了時まで抱えることになるのがスポンサー企業だ。北京オリンピックには「ワールドワイドパートナー」と呼ばれる公式スポンサーが12社ある(1業種1社)。スポンサー料は1社あたり5千万ドル(約50億円)。この対価として前回大会終了時から4年間、五輪のロゴマークを使用するなどオリンピックのイメージを使ってPR活動ができる。だが、肝心の北京オリンピックのイメージが悪化しているのである。

 中でも頭を抱えているのが、聖火リレーのスポンサーにもなっている企業だ。公式スポンサー12社のうち3社が、オプション契約でいくらか上乗せし聖火リレースポンサーになっている。コカ・コーラと、韓国の家電・電子製品メーカーのサムスン電子、中国のパソコンメーカー・レノボである。

 聖火リレーの目的はオリンピックムードの盛り上げだ。古代オリンピック発祥の地ギリシャで太陽から採火された聖なる火を各国の人がリレーし、世界の人々が認める平和の祭典であるイメージを植えつける。それが開催地に近づくことで「いよいよ始まる」と思わせるわけだ。トーチを持つランナーは誇らしげであり、沿道の観衆は笑顔で見送る。それをサポートしているのがスポンサー企業であり、映像にはさりげなく企業ロゴが映るというのが望ましいのである。

 ところが今行われている聖火リレーはまったく違う。ランナーは警備スタッフにガッチリとガードされ、ランナー自身も作り笑いは浮かべているもののどこか不安げだ。沿道に立つのも警備の警察官ばかり。反中国派にとっては絶好のアピールの場だから、フリーチベットや黒地に手錠の五輪マークが映像に映ることもある。