企業としてコスト削減は常に意識すべき課題だが、中でも経費精算業務に着目する企業が増加している。経費精算業務をIT化し、コスト削減を実現する方法を、ラクス代表取締役の中村崇則氏に聞いた。

ラクス 代表取締役社長
中村崇則

1973年、山口県生まれ。神戸大学経営学部経営学科を卒業後、日本電信電話(NTT)入社。NTT在籍中、無料メーリングリストサービスを展開する会社を設立。2000年、ITエンジニアを育成する会社を設立し、10年、同社を株式会社ラクスに社名変更。

 交通費の精算に代表される経費精算業務に費やす人件費は、従業員数100人当たり、年間500万円以上にも上ることをご存知だろうか。

 経費精算業務では単純作業が膨大に発生しているが、その手間や時間は、企業の利益に直接結びつくものとは言い難い。

 この点に着目し、人件費削減と、成長加速につながる改革の一つとして注目されているのが経費精算業務のIT化である。

「背景には『ムダな業務時間を減らして効率を上げ、その分、戦略を考えたり、本来やるべき仕事に費やしたい』といった狙いがあるようです」

 こう語るのは、中堅・中小企業など法人向けに、業務効率化支援の、さまざまなクラウドサービスを提供するラクスの中村崇則・代表取締役だ。

 実際、営業担当者などが経費精算に費やす時間は意外に多い。紙や表計算ソフトで交通費を精算する場合、運賃をネットなどで一件ずつ調べ、所定の書式に転記して上司に申請するのが一般的。経費精算だけで1ヵ月に1時間ほどの時間を取られることも少なくない。

「上司は営業担当者の申請内容を確認・承認して経理に回し、経理スタッフは申請内容に誤りがないか、定期の区間が控除されているかなどをチェックし、仕訳、会計ソフトへの入力などを手作業で行わなければなりません。会社全体で見ると、驚くほど無駄な時間が生じ、その分、人件費に跳ね返ってきます」

 実は中村氏も、そうしたムダに頭を悩ませていた経営者の一人だった。従業員100名の時点で経費精算業務にかかったコストは人件費換算で年間575万円。ラクスにとって、予想外に大きな費用がかかっていた。