夏の歌といえば稲垣潤一の『夏のクラクション』とともに『サヨナラは八月のララバイ』を思い出す。今の世の中はEXILE全盛だけど、スタイルが良くて歌って踊れてカッコいいといえば昔は吉川晃司であった。まあ、「踊れて」のところはちょっと微妙で、ダンスというよりアクションというようなものではあったけど。
その吉川晃司が今年でデビュー30周年を迎えるという。僕も歳をとるわけだ。それでもいまだに彼がデビュー曲『モニカ』をひっさげて登場した時の印象は鮮烈に覚えている。
吉川晃司が1984年6月にリリースした2枚目のシングルが『サヨナラは八月のララバイ』である。作詞:売野雅勇/作曲:NOBODY/編曲:大村雅朗という、当時の歌謡曲通であれば感涙にむせぶようなキャスティングで作られている。NOBODYはあまり知られていないかもしれないが、矢沢永吉のバックバンドを長く務めていた。彼らがアコースティックギターで『モニカ』『サヨナラは八月のララバイ』をセルフカバーしたカセットテープを持っているが、いったいどこの音源なのだろう。
夏の風物詩といえば花火大会。東京では隅田川の花火大会が有名だが、横浜育ちの僕にとっては山下公園前の横浜港でおこなわれる花火大会のほうが思い出深い。必ず夏休みの初日におこなわれるからだ。横浜の花火を観ると、夏が始まるという感覚が子供のころから刷り込まれている。
そんなわけで、夏が始まった。関東は今日にも梅雨明け宣言が出るというが、僕のなかではもう夏が始まっている。そして今年はサマーラリーになりそうな予感がする(毎年言っているような気もするけれど)。
サマーラリーと言われても日本株の投資家には「いったい何の話?」という感じで受け止められるだろう。最近の日本株はサマーラリーどころかすっかり「夏枯れ」というのが定着している。
サマーラリーというのは主にアメリカ市場の話である。米国では、7月4日の独立記念日(インディペンデンス・デイ)から9月の第1月曜日の労働者の日(レーバーデイ)までの期間に株価が上がりやすい傾向があって、それをサマーラリーと呼んだ。ところが最近の傾向を見ると、7月はまだ株価が上がるものの、8月のパフォーマンスは冴えないことが多い。ちなみにダウ平均の月別パフォーマンスは過去10年間の平均で7月がプラス1.8%に対して8月はマイナス0.6%である。本家、アメリカ市場でさえ、サマーラリーはこのところ不発である。
日本株にとって夏場のパフォーマンスが冴えない理由はもうひとつある。「8月の円高」というアノマリーだ。米国債の利金・償還金の支払いとかお盆休みのポジション調整とかで8月は円高になりやすい月といわれる。
ここで思い出してもらいたいのが、6月30日付けレポートでも指摘した、今年はこれまで観られたアノマリーが効かず、すべて例年とは逆の動きとなっている点だ。「節分天井」と言われるが、今年の節分は底だった。格言で一番有名な「セル・イン・メイ」もなかった。5月に売ってしまっていたら、この戻りは獲れなかった。株式相場の季節性は、冬〜春のリターンがよくて、夏から秋が悪いというのが例年のパターン。月別で一番リターンが高いのが1月で「1月効果」として知られるアノマリーだが、今年前半で一番パフォーマンスが悪い(グラフ1:日経平均月別リターン)。年間リターンで1月に次いでいいのが新年度初めの4月だが、これも今年は悪かった。米国でも中間選挙の年の4-6月のパフォーマンスは突出して悪いが、今年はずっと高値追いが続いた。今年は例年観察されるアノマリーとはすべて逆の動きになっている。どうしてそうなのかは分からない。そもそもアノマリーとは、明確な理由は分からないがなぜかそうなる経験則のようなものだ。

だから今年は「8月の円高」のジンクスの逆で「円安の8月」となるのではないか。
そもそも「8月の円高」というのは、言葉だけが「言い伝え」のように残っていて、実際には「7月の円高」である。表はドル円相場の過去5年の月別変化率だが、過去10年で見ても同じ傾向が認められる。

そんな「7月の円高」が観察されてきた過去の為替相場だが、今年はどうか?6月末のドル円のレートが101円30銭程度だから円高は進んでいない。これもまた過去と逆パターンだ。
この7月は結構ドル円の悪材料が揃った。ポルトガルの銀行不安、マレーシア機の撃墜に、イスラエルのガザ侵攻。これだけ不安要素が重なればいままでの感覚だと簡単に1ドル100円割れとなってもおかしくなかった。なにしろドル円は200日移動平均も下回り、三角保ち合いを下放れる寸前。チャート的には首の皮一枚でつながっているような状況である(グラフ2)。

そんな状況にありながら、例年円高が進むこの7月を持ち堪えているという点でドルの下値は相当堅いと思う。8月は為替主導で相場に動きがでてくるのではないか。想定としては月初の雇用統計で再び強めの数字が出て早期利上げ観測が浮上するというのがあり得そうなシナリオだ。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、ワイオミング州ジャクソンホールで毎年8月下旬に行われるFRBのシンポジウムに今年出席する見通し。ジャクソンホールに向けて、米国の利上げ時期前倒しの思惑が徐々に高まって為替相場はドル高円安に動くと予想する。
そうなれば、もちろん日本株もレンジを一段、切り上げるだろう。ずっと続いてきた膠着相場にサヨナラだ。

(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)
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