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7月28日 18時0分
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『21世紀の資本論』 - 広木隆「ストラテジーレポート」

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トマ・ピケティ著『21世紀の資本論』が爆発的に売れている。英語版(原書はフランス語)で700ページ近いハードカバーであるにもかかわらず、40万部を超えるベストセラーになっている。

同書の主張は明快である。貧富の差は拡大する。富めるものはより豊かになり、格差がますます広がる。富裕層が所得と富を独占し中産階級は没落していくというのである。

それはなぜか。理由もまた明快に示されている。資本収益率をR 、経済成長率をG とすると、

R > G

という不等式が常に成り立つ。資本収益率、すなわち株式や不動産など資本が生み出すリターンが、経済成長率、すなわち労働などが生み出す経済的付加価値を上回るというのだ。GDP(国内総生産)というのは付加価値の合計で、その付加価値を生み出すのが国民の労働であることから、その労働への対価、すなわち賃金がGDPの大半である(分配面からみた場合)。その労働者の賃金の伸びよりも、資本(家)のリターンが常に高いというのである。

ピケティがすごいのは、誰もが薄々勘付いていたその「不都合な真実」を莫大なデータで実証してみせたところである。彼は古今東西、可能な限り世界中からデータを収集し、200年に及ぶ世界の資本収益率と経済成長率を統計にまとめ上げたのだ。

それによると資本のリターンはだいたいのところ、5%程度に収斂する。一方、経済成長率は概ね1〜2%である。この差がそっくり、「格差」となる。まさにカール・マルクスが『資本論』のなかで述べた、賃金労働者からの搾取によって自己増殖する資本の論理そのものである。

新たなコナンドラム

マルクスの『資本論』と言われてもそれは教科書の世界。過去200年に及ぶデータと言われてもそれは「歴史」の世界。では、この理論を現実論として納得したい向きには、こちらのチャートを眺められたい。S&P500株価指数と米国10年債利回りのグラフだ。



低成長の経済を反映して長期金利はなかなか上がらない。その一方で株価は最高値更新が続く。2000年代半ば、米連邦準備理事会(FRB)による相次ぐ利上げにも関わらず、長期金利が上昇しなかったことを捉えて当時のグリーンスパン議長は「コナンドラム(謎)」と言った。現在の状況を「新たなコナンドラム」と評するメディアもある。なぜかといえば、株が好調なのは、普通に考えれば経済が好調だから。景気が良いなら金利も上がるはずだ。そうなっていないのだから「謎」である。

いやいや、景気が悪くても株は上がる。「不景気の株高」という言葉もあるくらいだ。景気が悪ければ、金融が緩和される。現在の株高はリーマンショック以降、FRBが続けてきた金融緩和の果実。量的緩和による流動性相場の帰結であるとも言われてきた。

しかし、過去200年の統計分析をもとに書かれたトマ・ピケティの『21世紀の資本論』によれば、株のリターンが高く、金利が上がらないのは、「謎」でもなんでもなく、きわめて「普通のこと」である。

200年にはとても及ばないが、直近10年の例を見てもS&P500株価指数は約1.8倍に上昇している。これは年率6%で成長した計算になる。これに約2%の配当利回りを足せばトータル・リターンは8%となり、過去10年間のインフレ率は平均2%程度なので実質リターンは6%である。

一方、過去10年間の実質GDP成長率は平均1.5%だった。また、過去10年の米国10年債利回りの平均値は3.4%である。2%のインフレを調整した実質金利は1.4%と実質GDP成長率にほぼ一致する。実質金利=実質経済成長率という教科書通りの結果である。

資本のリターンが経済成長を上回るというのが『21世紀の資本論』のエッセンス。過去10年の米国経済と市場のパフォーマンスがまさにその通りの結果となっている。
捻出された利益

米国の株価上昇は企業業績の成長に沿ったものである。トムソン・ロイターのデータによれば、S&P500の1株当たり利益は2004年の実績67.1が2014年には119.34に拡大すると見込まれている。10年で1.8倍だから株価の変化率とちょうど同じである。利益が8割増しとほぼ倍になるわけだから、株価も8割増し、ほぼ倍になる。

ところが低成長の時代にあってはトップライン(売上高)がなかなか伸びない。10年前に比べれば5割増えたが、利益の伸びを下回る。売上高の伸びを伴わない利益の増加は、リストラや賃金抑制などコスト削減によるところが大きい。まさに労働者の犠牲のうえに「捻り出された」利益であり株価上昇であるわけだ。(自社株買いによるEPSの上昇という「自作自演」の効果も大きい)



この傾向は今に始まったことではない。米国の経済回復は「ジョブレス・リカバリー」とよく言われた。ジョブレス・リカバリーとは、景気が回復しても雇用の低迷が長期間継続する状態のこと。米国では、91年及び01年の景気後退から回復へ転じる際が顕著だった。

コスト削減の一環で企業が賃金の低い国に生産設備を移転すれば国内の雇用は増えない。国内に生産設備を維持する場合でも新規設備の導入、既存設備の改良などで労働生産性が上昇すれば、少ない人手で付加価値の高い製品を作ることが可能となるため、景気が回復しても雇用の増加には結びつかない。利潤を追求する企業は当然、コスト削減に努め利益率を高めることに心血を注ぐ。それが株主に報いるために必要なROEの向上に寄与するからである。

こうして労働(者)は収奪され資本(家)は増大する。富めるものはますます豊かになり中間層は結果として割負けていく。この格差を止めるには富裕層へ累進的な重税を課すことだ、というのが『21世紀の資本論』の結論であるが、さすがにそれには懐疑的な声も多い。

経済学の世界でスターとなったピケティ氏を批判するのは高名な経済学者に任せるとして、僕の指摘は次の一点に尽きる。

マルクスの時代なら、労働者からの搾取によって富を増やす資本家を批判もできただろう。しかし、現代においては誰でも「資本家」になれる。企業の経営権を手に入れるのは難しい。しかし、ひとりの「株主」として(その議決権の範囲で)経営に参加することはできるし、なにしろ資本の成長を享受できる。

ただの労働者である限り、所得と富の成長は経済成長率Gを超えることはない。そして経済成長率Gは長期的に見て常に資本成長率Rを超えることはない。しかし、あなた自身が資本家の側にまわれば、あなたの所得と富をRの率で増加させることができる。

結論:いますぐ株主になろう。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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