「金融危機の6年」の後の安定

「グレートモデレーション」(Great Moderation/大いなる安定期)とは、2000年代半ばから2007年のサブプライム問題以降の金融危機に至るまでの数年間に及び、金融市場のボラティリティが低下し、金融市場全般で安定した状況が続いていた時期を指す。

 また、1970年代の高インフレ期「グレートインフレーション」(Great Inflation)期から転換し、1980年代以降の20年に及ぶ時期を広義での「グレートモデレーション」とし、その最終局面(クライマックス)である2000年代半ばを冒頭に示した狭義の「グレートモデレーション」とすることが多い。

 その後、金融危機の6年間は「グレートリセッション」(Great Recession)と称されることもある。

慢心は人間の性(さが)

 今日、金融危機が収拾に向かい、市場変動が低下し、再び2000年代半ばの「グレートモデレーション」に戻りつつあるのでは、との見方が台頭している。本論は、2000年代半ばの頃と現在を比較しつつ、そこでのリスク要因を考えることにある。

 結論的に筆者の認識を述べれば、まだ金融危機直前の2000年代半ばの状況とは異なるが、金融の長期安定に伴う慢心(complacency)には常に留意が必要になると思う。

 同時に、そうした意識は過去1997年にグリーンスパン元FRB議長が発した警告、「不合理な熱狂」(Irrational Exuberance)とされる時期とも共通するものがあり、それは人間が常に繰り返してきた性(さが)の1つとも言える。