問題はマネジメント力にあり

 もう一つ気になったのは、システム関連費と研究開発費と人件費が飛び抜けて多いことだ。

 高田が送ってくれた報告書には、「在庫管理コストと新製品の研究開発費用が経営の重しになっている」と書かれていた。

 前原は、次にバランスシートに目を通した(図表2)。

 ここでも気になる科目があった。

 まず商品在庫金額(12.5億円)の大きさだ。1ヵ月の平均売上高は2.5億円だから商品在庫回転期間は5ヵ月になる。

 つまり、5ヵ月分の売上に相当する商品代金が在庫になっているということだ。この理由として報告書には、「在庫管理の不備」とコメントされていた。

 二つ目は売掛金(10億円)の多さだ。売上債権回転月数を計算すると、なんと4ヵ月にもなっていた。

 もうひとつは、借入金(25億円)の多さだ。売上高の10ヵ月分に相当する資金を銀行から借入している。

 決算書の数値はさんざんなのだが、文京銀行の報告書は新生バイオ社の企業価値を好意的に「概ね50億円程度」と評価していた。

 つまり、卓越した開発力と人材、そして特許権をはじめとした知的財産を高く評価しているのだ。

 前原に疑問がよぎった。この会社の強みはハッキリしている。なのに、なぜこの程度の規模に留まったままなのか?

 その理由はすぐに予想できた。経営陣のマネジメント力に問題があるのだ。

 そうだとすれば、ニューコンにとって誠に都合がいい。マネジメントの重要性を気づかせれば、間違いなくコンサルティングの仕事が入ってくる。

 前原は決断した。この会社を陳に買わせるのだ。

 マネジメント力が不可欠であり、それを補うのが、我々ニューコンなのだから。