ラーニング・ビレッジを作った本当の理由

 普段なかなか忙しくて会えない友人たちと楽しい時間を過ごしながら、人生について考えたり祝ったりする中で、マリアンさんは友人たちを祖父母の住んでいる村に連れて行きました。そこでは彼女のゲストを歓迎するため、200人ものジンバブエの人たちが集まってくれたそうです。

 そのときのことをマリアンさんはこう語ります。

「ジンバブエの伝統料理や音楽を一晩中、楽しみました。ジンバブエではこのようなお祝い事は朝日が昇るまで、お祝いをする習慣があるのです。80歳近くだった私の祖母でさえも踊りまくっていました(笑)。夜は星空の下で語り合いました。

 それはとても美しい光景でした。招待した友人たちは、ポジティブな意味でカルチャーショックを受けたようです。貧困で大変なイメージがあったけれど、ジンバブエの人のコミュニティーやバイタリティーに感銘を受けたのです。

 翌日村の人が、寄付の品を持ってきたゲストに向けて感謝の気持ちを込めてスピーチをしてくれました。でもそれはある意味やり過ぎたものでした。彼女は“あなたたちなしでは、私たちは何者でもないのです。使い古しの服でも何でもいいので、あると助かります。それらが必要なのです。お願いだからまた来てください。”と言うのです。すると私が呼んだ友人でゲストの一人が、こう返事をしました。

“あなたたちが私たちにくれたものは、私たちが持ってきたものとは比べ物にならないほど価値のあるものです。昨晩の経験で人生やコミュニティーがどのような結果をもたらすかというのを私たちは学んだのですよ。”と。

 この2人のやり取りを見た瞬間、私はジンバブエに帰らなければいけないと思いました。ジンバブエには素晴らしく美しいものがたくさんあるのに、住んでいる人でさえも貧困ばかりに目が向けられていて、すでに持っているものが何か見ていなかったのです」

 決心したマリアンさんは、その思いをまずは皆に知らせることが大事だと行動をおこしました。数百人の知り合いや友人宛に「この度、ジンバブエに帰ることにしました。ラーニング・センターを立ち上げます。幸運を祈っていてくださいね」というメールを送って宣言したそうです。

 そこで彼女は、ジンバブエで上手くいっているコミュニティーをたくさん訪ねて、出会った人々に“あなたはどんな人間で、なにをジンバブエの人に貢献できると思いますか”と問いかけました。

 そのときの様子についてマリアンさんはこう語ります。「最初は皆、この問いに答えられませんでした。繰り返しますが、彼らはすでにあるものに対してまったく理解していないのです。もし大きな車を運転して来る人を見たら、自動的なリアクションとして“これが私たちの必要なもののリストです”と彼らは言うでしょう。そこで本当にすでにここ、ジンバブエにあるものを感謝していけるようなマインドにシフトできるところが必要だと思いました」

 そこで、ラーニング・ビレッジである、クフンダ・ビレッジを立ちあげました。ラーニング・センターではなく、人々が実際に住める村にしたのは、来ては去るのではなく毎日生活すれば、自分の持っているものに気づくプロセスでより深くまで学べるだろうと思ったそうです。

幸福大国デンマークが<br />アフリカにできること
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