岸見 アドラー心理学では、そうした「原因論」を否定しています。あくまで原因は現在の目的を達成するために、後から作ってしまっているに過ぎない。つまり、堀江さんの場合、「自分は不細工だから」という原因を意図的に作って、女の子に振られるリスクを回避していた可能性がある。

ホリエモンもほれた<br />閉塞した社会を切り開くアドラーの教え『嫌われる勇気』が理論編、『ゼロ』が実践編」という古賀氏の意見に堀江氏も納得。

堀江 はい。女の子に対して、積極的にならない理由を求めていたという側面はありましたので、すごくよくわかります。だから、恋愛の問題で最後までとらわれていたのでしょう。やっぱりアドラー心理学は面白いですよね。面白いですけど、とらわれている人からすれば、受け入れ難い思想でもあります。でも、これだけベストセラーになれば、拒否反応を示すタイプの人の手にも届く可能性が出てきますよね。

岸見 そうなってほしいですね。そういう方の役に少しでも立てればうれしいです。

古賀 両方の著書に関わらせていただいた経験で言うと、『嫌われる勇気』が理論編、『ゼロ』が実践編という分け方ができると思いました。

堀江 そうそう。僕も講演会でそういう話をしているんですよ。本の帯コピーを変えて売り出しますか?(笑)

古賀 いいですね(笑)。でも、本当にセットで読んでほしくて。『嫌われる勇気』だけで足りない人は、『ゼロ』を読めば堀江さんの人生を通してリアルに納得できるだろうし、『ゼロ』だけを読んで「堀江さんだからできたんじゃないの?」と思った人は、『嫌われる勇気』を読むと理屈がわかり、自分自身でも実践できる生き方だとわかってくる。

堀江『嫌われる勇気』は僕の読者に本当に評判がいいです。

古賀 実際に執筆しながら、堀江さんのことを思い浮かべたことが何度もありました。

堀江 そうなんですか。光栄ですね。この二つの書籍が深いところで結びついていて、しかも両方とも古賀さんが関わっているということに、運命を感じますよね。

古賀『ゼロ』の制作を進めながら、「堀江さんって現代のアドラーじゃん」って、スタッフ同士で話していたので、偶然というより、必然的な運命だったのかもしれません。

堀江『嫌われる勇気』がこの時期の、この日本でヒットしたのにも運命を感じます。

岸見 四半世紀ほど研究していますが、アドラーがこんなに注目されたのは初めてです。