17日にウクライナ東部でマレーシア航空機が撃墜されたことや、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに地上侵攻したことを受けて、地政学的なリスクへの懸念が強まり、原油相場は上昇した。16日には米国がロシアの金融・エネルギー・防衛関連企業を対象に新たな追加制裁を発動したことも地政学的な懸念材料となった。

 それまでの原油相場は軟化傾向にあった。国際指標とされるブレント原油は、6月中旬にイラク情勢の緊迫化に伴って115ドル超まで押し上げられた後、7月16日には105ドル台と、イラク情勢が緊迫化する以前の水準にまで下げてきていた。

 イラクでは、過激派組織「イスラム国」がイラク北部や西部を中心に勢力を維持するものの、同国南部の油田地帯には侵攻が及ばず、当面の原油生産には影響がないとの見方が浸透してきた。

 これに加えて、リビアでの原油生産が回復する動きが原油相場の押し下げ要因になった。リビアでの原油生産量は、昨年夏に一時日量140万バレル程度まで回復していたが、その後、反政府勢力による港湾封鎖や石油施設におけるストライキから大幅に原油生産が落ち込んでいた。

 しかし、最近は7月8日時点で日量32.7万バレルであった原油生産量が、17日時点では55.5万バレルに持ち直したとされる。リビアでの原油生産の回復期待はこれまで幾度も裏切られてきたが、足元では再び生産回復への期待が高まっている。

 また、季節的に米国がドライブシーズンを迎え、ガソリン需要が盛り上がることが意識されやすい時期になっているが、実際には米国のガソリン需要の伸び悩みが明らかになりつつある。