三澤智光氏
日本オラクル 専務執行役員
データベース事業統括

 クラウド環境では、守るべきサーバやアプリケーションが社外にある場合、セキュリティの境界線の設定が複雑となり、仮想環境で複数の仮想マシンがある場合もセキュリティレベルの低いマシンが1台あれば、それがリスクになってしまう。その点、オラクルは創業時から一貫してセキュリティ対策の向上に取り組んできた。クラウド環境になっても厳密な権限管理やマスキング機能など新たなテクノロジーを開発している。

「従来のデータベースの障壁は取り払われ、さらに、サーバの高可用性とセキュリティは従来の製品と同じように担保されています。Database In-Memoryではインデックスを作り維持する必要がないので、開発・運用コストも劇的に削減することができます」(日本オラクル専務執行役員・三澤智光氏)

たゆまぬ努力の末に生まれた高速化技術

 今から20年前の1993年、世界のデータベース市場規模は約1200億円で、オラクルはNo.1シェアを獲得していた。その後、企業買収によるシェア変動があったものの、2012年に2兆8200億円市場となってからもシェアを45%まで拡大している。

 顧客からの信頼は、一朝一夕には獲得できない。オラクルが一貫してデータベース市場で高いシェアを維持しているのは、たゆまぬ技術革新を遂げてきたからだ。

 例えば、先に挙げたDatabase In-Memoryの特長によってビジネスの現場がどう変わるかを想像してみてほしい。すさまじい高速処理が実現したことで、経営陣から「5分以内にこのテーマについてのレポートをまとめてほしい」という依頼があっても即座に応えることができるようになったのである。

 それを可能にした技術は、「デュアル・フォーマット・データベース」だ。これについて、データベース事業統括製品戦略統括本部のCloud & Big Data推進部長、佐藤裕之氏は次のように説明する。

佐藤裕之氏
日本オラクル データベース事業統括
製品戦略統括本部
プロダクトマーケティング本部
Cloud & Big Data推進部長

「かねてよりリレーショナル・データベース(RDB)の分析処理速度をさらに上げたいと考えていたエリソンCEOは、2013年9月のイベントOracle OpenWorldで、多くの人々から『ラリー、それは無理だ』と言われたエピソードを披露したが、彼は妥協しませんでした。『行』と『列』の2次元表形式で表現されるRDBはこれまで行型が大半を占めていましたが、オラクルは行を更新すると列も更新され、データの一貫性や整合性が保てる機能の開発に成功しました」

 そして、リアルタイム分析の高速化100倍や、混合ワークロードと呼ばれる様々な特性の処理全てにおいて劇的な高速化を実現したのである。

課題先進国日本の未来を支えるITの力

 クラウドや、インメモリでのデータ処理の高速化は、多くの課題に直面する企業経営にどのような恩恵をもたらすのだろう。

「最大のメリットは、従業員の空いた時間をより利益率の高い仕事に振り向けることが可能になることです」と杉原博茂社長兼CEOはいう。

 生産人口が8000万人以下となる近い将来の市場縮小、グローバル展開という日本企業が直面する課題を考えれば、ITを武器にした生産性の向上が急務であることは論を俟たない。

「東京オリンピックが開催される2020年を目標に、最初の3年でテクノロジーと足場を固め、次の3年でジャンプし、クラウドといえばオラクルといわれる存在をめざしたい」と、杉原社長が顧客への誓約を何度も繰り返したことは「ITの力で、世界と日本が直面する課題を解決する」という日本オラクルのビジョンの表れともいえよう。