斜陽論が囁かれている新聞業界。しかし、『週刊ダイヤモンド』2007年9月22日号特集「新聞没落」でも紹介したように、過去の成功体験に囚われて、将来のビジネスモデルを描き切れていない経営者は少なくない。新聞の危機をいち早く指摘してきた、毎日新聞社元常務で『新聞社―破綻したビジネスモデル』(新潮新書)の著者、河内孝氏に新聞業界の現状と将来について話を聞いた。

河内孝氏
河内孝氏(かわち・たかし) 毎日新聞社会部、政治部、ワシントン支局、外信部長などを経て編集局次長。その後、社長室長や中部本社代表など経営の中枢にも携わる。2006年に常務取締役(営業・総合メディア担当)を退任後、新聞業界の問題点を内側から鋭くえぐり、再生への道標を記した『新聞社―破綻したビジネスモデル』(新潮新書)がベストセラーとなり、業界でも大きな波紋を広げた

――朝日新聞社、読売新聞グループ、日本経済新聞社が共同インターネット事業「ANY」を立ち上げました。販売店の共同化も一部で進めていく方針です。この構想はうまくいくのでしょうか。

 「ANY連合」から外れた大手紙2社のうち、産経新聞社はこの構想がすべて実現するというのを前提に考えていこうと意見を集約した。一方、毎日新聞社はまったく逆。「うまくいくはずがない。同床異夢だ」というのが社内の考えとなっている。

 しかし、問題は1~2年でうまくいくとかいかないとかということではない。世界のメディアは、テレビや通信を中心に大きな企業体によって飲み込まれていく時代が来ている。

 その流れから日本は無縁なのかということだ。「言論の“鎖国”をしても大丈夫だ」という程度の認識でいいのかということが問われている。