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日米株価はスクラッチ - 広木隆「ストラテジーレポート」

ゴルフの握り

日本では賭け事は禁止されている。では、どうして競馬や競輪はいいのかと言えば、特別な法律を作ってやってよいことにしているからである。話題のカジノにしても、いわゆるカジノ法案(統合型リゾート推進法案)の成立が必要である。刑法では「185条 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」とされている。高額レートでの賭け麻雀や賭けゴルフは罪になるが、仲間内でメシ代を賭けるくらいは許されるだろう。

と、いうことでゴルフでは毎回、「握る」ことにしている。「握る」とはゴルフで賭けることの隠語だが、「握りますか?」と訊かれて、賭けに同意するときに握手するのが語源であろう。断っておくが僕は、現金は賭けていない。

ゴルフの握り方 ― グリップの握り方ではなく、賭ける方法 ― には様々なものがあるが、代表的なものは、18ホールの合計ストローク数で競う「縦」の握りと、各ホールをマッチ・プレー形式で競う「横」の握りとがある。僕は、たいてい、縦・横、両方で握る。念のために言うと、現金は賭けていない。

スクラッチ

ゴルフにはハンディキャップというものがある。実力の違いをハンディで調整して、誰でもゲームとして楽しめるようにする工夫だ。同じような実力の人とラウンドする場合は、「スクラッチ」でプレーする。「スクラッチ」とはハンディキャップなしで競うことだ。明らかに実力が上の相手でも、それが同期の友人だったりすると、「スクラッチね」と言われて、ついつい対抗心から「いいよ。ハンデあげてもいいけど?」などと強がったりしてしまう。それでいて内心は、いったいいくら負けるのか冷や冷やだったりする。くどいが現金は賭けていない。賭けるのは、せいぜいチョコレートを1ストロークにつき1枚程度だ。

スクラッチとは英語で「引っ掻く」という意味である。スクラッチという言葉が、「ハンディキャップなし」「同列」という意味に使われるようになったのは、駆けっこの時に地面に棒で線を引っ掻いて、スタートラインとしたことに由来する。「スクラッチから(from scratch)」と言えば、ゼロから、はじめから、という意味だ。

米国の株価と日本の株価がスクラッチに並んだ。一時は、最高値更新を続ける米国株の後塵を拝するだけ拝していた感のあった日本株だが、気が付いてみれば年初からのパフォーマンスがほぼイーブンとなった。

ダウ平均は先週1週間で467ドル下げて今年に入ってからの上昇分を全て吐き出した。一方、日経平均はまだ昨年末の高値を抜けていないものの、TOPIXで見ればほぼ昨年末の水準まで上昇。米国が下がって日本が上がって昨年末を基準とすると株価が並んだ格好である(グラフ1)。


日本株に分があった

日本と米国は株価の位置だけでなくファンダメンタルズ面も並んでいる。米国は主要500社のうち378社の決算発表が済んでいるが、これまでのところ前年比7.7%増益。決算が始まる前の6%増益予想から上振れしている。日本も先週で主要企業の約半数の決算が発表され、除く金融・電力ベースだとほぼ同じ増益率だ。但し日本は事前の予想がクィックコンセンサスでほぼフラット、横ばいだったから上振れ度合いという面では米国より大きい。

PERも15倍、16倍とほぼ同じ。米国はここから1年先の予想PER(4四半期先の予想EPSベースのPER)は15倍に下がるが、日本もクィックコンセンサスの予想をベースとするPERは14倍になる。



こうしてみてくると、日本株の方が業績のモメンタムが強くかつ割安で米国対比、分がいいように思える。その差がそっくり、日米の株価が並ぶに至った経路の背景だろう。すなわち米国が下げて日本が上昇して追い付いた。それは日本のほうに勢いがあったということである。

勢いがあった、と過去形で書いた。スクラッチとは横一線、これからが勝負である。目線を先に向けて日米株価のマッチレースを見守っていこう。暑い夏になりそうだ。

ところで、証券会社の人間のほうがリフレ派が多く、銀行系のひとのほうが反リフレというか慎重論が目立つように感じるが、それは賭け事のルールにも表れているように思われる。

証券会社の麻雀は超インフレ・ルールである。ウーピン、ウーソー、ウーワン、赤牌全部がドラだから、ドラだらけ。「もしドラ」と言えばベストセラー、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の略称だが、証券会社では「もし切りたい牌がドラだったら」の略である(楠木先生のネタ拝借)。割れ目、ぶっ飛びなんでもあり。とにかく、超インフレ・ルールなのである。

念のため、断っておくが、リャンピンのワン・スリーで、現金は賭けていない。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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